Vol.330 国民生活置き去りのままドタバタの国会が閉幕

国会がバタバタと何とか法案を多数派の論理で乗り切り閉幕した。
自民党300を超える議席を獲得してきた高市政権ではあったが、普通にいけば、順風満帆の国会を乗り切ったことを祝ってあちこちから祝福の声があがってもおかしくない国会閉幕という状況が予想されたはずではあるが、現実はまったく真逆の様相を呈している。

ここへきてマスコミ各社の調査で内閣支持率は軒並み10ポイントかそれに近い勢いで下降し、とりわけ毎日新聞では41%と過半数の50%ラインを割り込み、不支持率44%と逆転した。同紙はこれを「高市政権『終わりの始まり』?」との見出しで大きく報じている。

今国会を振り返ってみると、2月8日に総選挙が実施され、立憲と公明による中道という新たな政党誕生という仕掛けが、有権者にとってみれば何の新鮮味もなく、新たな政策もないというお粗末な野党の仕掛けにより、自民党が大勝し、316議席を獲得、連立相手の維新の会の36議席と合わせて352議席の議席を獲得、衆議院議員全体の75.7%を占るという高市早苗政権が誕生している。

そのもとで開催された国会ではあったが、2026年度予算案をほぼ前年度末までに成立させた他、「国家情報会議」設置法案や皇室典範改訂案を含む政府提出の64法案全てを成立させ、さらには、高市さん肝いりの国旗損壊罪法案や維新の会が政治生命を賭けている「副首都」構想関連法案などの議員立法を実現させ、国会が終了している。

しかし、肝心の市民社会が切迫している円安インフレによる物価高騰問題。そこから派生している食料品への消費税ゼロ案への対応といった緊急事態に対して、結局はその結論を得ずまま8月上旬に高市首相が判断するという敵前逃亡とも受け取られかねないお粗末な対応が露呈した。

しかも消費税の税率をめぐっては、0%か1%かで迷走し、どちらにしてもなぜ2年間で元の税率に戻すと決めてしまうのか、自民党内でも異論が多い中、国会でもまともな議論がされないまま国会での論戦は終止符が打たれ、高市首相の判断に委ねるという極めてお粗末な国会となった。数の論理から言えば、自民党にとっては順調な国会運営が期待されていただけに高市首相の手腕に?がついたことは言うまでもない。

“女性初の総理大臣の実現”という漠然たる期待と、野党第一党の立憲民主党と公明党による“中道”結成という致命的なオウンゴールによって、結果が極端に振れる小選挙区制という特徴を持った選挙結果は、300議席を超えるという大勝を自民党が招き入れるという皮肉な結果となった。

この圧倒的多数を得た高市政権は、この国のあるべき方向を見定め、その道へと導くために与党の中で多数派工作を丁寧につくりあげ、また官邸はじめ各省庁の行政実務を担う官僚達との信頼を得るために努力を積み重ね、挙党態勢を強固にした上で、野党にも水面下も含めパイプを築き上げ揺るぎない体制を確立することが高市さんには求められた課題であったはずである。

しかし、高市さんは一人でキリキリ舞いして孤軍奮闘という状況であるかのように、国会中でも昼夜を問わず関連資料に目を通す、官僚からの説明を受ける。そのため睡眠時間は、わずか0~3時間で頑張っているとの姿を強調している。国会や官邸の用事が終われば一刻も早く公邸に帰って炊事、洗濯、介護、そして勉強だとSNSで近況報告しているが、果たして世間の空気、世論の動向は、それを全面的に応援しようという臨場感あるものになっているのかと言えば、むしろ逆効果に働いているようである。

その結果かどうかは別にして、物事の優先順位が不明確となり、それこそ丁寧な議論が必要であるべき皇室典範の改訂という問題。世論的には、「静謐(せいひつ)な環境」をキチンと整えた上で、政治的な争いや激しい対立を避け、国民全体が落ち着いた冷静な状態で理解を深められる状況をつくりあげた上で、皇室典範という法改正につとめる必要があったことは、火を見るよりも明らかである。

しかも女性天皇容認という国民の7割が支持している現実を無視し、“愛子天皇”待望論を敵に回して強引な法案成立にこぎ着けたことは歴史に汚点を残す行為といえるだろう。

また、維新の会の吉村洋文代表を連立内に引き留めておくためにいま法律として優先すべきかどうか自民党内でも意見が割れている“大阪都”構想に、わざわざ国会を延長してまで手を貸すという、国会運営に疑問の声が寄せられるのも無理のない事である。

大勝したことが、逆に高市政権のピンチを迎えているという皮肉な現状だ。