最近、斎藤幸平さん(東京大学大学院総合文化研究科准教授)などが口にする言
コラム | 2026年6月8日
コラム | 2026年6月8日
最近、斎藤幸平さん(東京大学大学院総合文化研究科准教授)などが口にする言葉に“テクノ資本主義”という言葉や“テクノ封建制”という言葉が度々紹介されている。
テクノ資本主義とは、巨大IT企業が市場やデータを独占し、利益を生み出す新しい経済の仕組みのことを指すらしい。企業は“クラウド空間の領主”となり、それを利用するわたしたちは“農奴”のように手数料や個人データを差し出すことで経済が回る、現代版の身分制度に近い状態を指す言葉としてテクノ封建制という言葉でもあらわされる表現である。
“テクノ封建制”は、GAFAM(ガーファム=グーグル、アマゾン、フェイスブック〈現メタ〉、アップル、マイクロソフト)やイーロン・マスクに象徴される巨大テック企業がわたしたちからサービス料や手数料などをサブスクのように徴収し、それにより膨大な富が集積され、きわめて強力な存在として君臨するようになった経済システムを指しており、一部の者だけが生き残ればよいという終末ファシズムともいえる権威主義的考え方をあらわす言葉としても引用されている。
つまり、“テクノ封建制”の原点は、地球は崩壊の秒読み段階に入っているという認識のもと、それは、もはや人類全員を救う道などないという考え方に基づき、自分たちの利害と生き残りのみに関心を持ち、それをさらに実現させる道として、莫大な資産獲得のため、新しい収奪型の経済へ移行させようという動きのことである。アメリカシリコンバレーを中心とするいわゆるテック業界−AI革命、ロボット革命、バイオテック革命などが、技術の進歩による社会変革への熱には相当のものがあり、技術革新のポテンシャルについては、「より高度なテクノロジーで解決できない物質的な問題は存在しない」とまで断言している。
また、「貧困という問題が存在する今、われわれは豊かさを生み出す技術を発明しよう。現実世界に問題があるなら、われわれはそれを解決する技術を発明するのだ」とまで言い切っている。つまりは、気候変動、資源枯渇、パンデミックなどあらゆる困難はわたしたちの技術によって解決できるし、人類の未来は明るい。進歩と停滞のどちらかを選べるならば、豊かさをもたらす進歩に決まっている。とまで彼らは自信満々に語っていると言うのだ。
しかし、こうした富を享受する者は、きわめて限られた一部のひとたちに富が集中するという結果をもたらそうとしている。大多数が中流と言われる生活水準をキープし、享受できた20世紀の資本主義とは、明らかに違う資本主義が到来しているという危機意識が必要である。それが、“テクノ資本主義”であり、“テクノ封建制”と言われている。
修復不可能とも言われている“気候崩壊への危機”という人類が共通して体現することになった豪雨、洪水、山火事の頻発や熱波による農業や畜産への悪影響、さらには、食料作物が壊滅的な打撃を受け、生産量が急激に低下、その被害は、飢餓、貧困が世界規模で大幅に悪化するという事態を迎えようとしている。
人権が確立された社会の実現にとっては、“気候崩壊への危機”に対して、富める者は優雅な生活水準を今後も享受し、逆に環境弱者・難民は厳しい“気候ファシズム”という暴風に巻き込まれながら生活崩壊への道をただってしまうという最悪のケースさえ想定されている。1%の強者と99%の弱者の格差はますます増大していく。環境−社会崩壊をまえに、命が選別されるという時代を迎えてしまうことになるかも知れない。
さらには、左右対立社会から上下社会へ転換してきているという社会体制の変遷である。従来から社会を二分させてきた“右翼か、左翼か”、といった社会体制や“右か、左か”、“保守か、革新か” 、言われた左右対立の社会が、現代はそれが根底から変化し、富める者と貧しく者との上下社会に変化しているという時代認識である。社会体制やありようが根本的に変化をしているという世界情勢にわたしたちは、いま生きているという現状を確認しなければならない。
人権を取り巻く人類の変化を見たとき、気候変動や深刻な格差社会の到来。きわめて厳しい貧困の実態など、“反人権”の勢力が世界を覆い尽くすほどの勢いと化して、わたしたちを飲み込もうとしている。そうした事態に民主的な社会運動が地道にひとつひとつの運動を展開し、厳しい時代への突破口を見いだしていかねばならない。
まずその大前提は、自分の住む自治体での各種政策、特に人権政策に対しての自分たちの考え方や提言ができるようにとりくむ事である。現代の危機を理解して、それを突破していくための人権政策に磨きをかけることにある。
わが国全体が、『沈黙する社会』では世界を変えることなど到底実現しない。こうしたムードを打破するためにも、声を上げ続け、未来を想像し、確かな一歩を踏み出すことでしか、目標は達成されない。隗より始めよ。一歩を踏み出そう。