Vol.123 水平社会の実現に向けて 新たな政治勢力を結集し大転換の年に 府連委員長・赤井隆史


2018年の新たな年を迎えた。
昨年の終盤は、解散総選挙が突然降りかかり、民進党の衆議院が突然希望の党へ集団移転し、すべての候補者を受け入れることが出来ないと希望の党代表である小池さんが突然“排除”の論理を持ち出し、それに反発するリベラル派による枝野氏の立憲民主党が突然立ち上がるなど、“突然”“突然”の連続であった。
野党分裂、希望の党に対する期待度の低迷などで結局、自民党を利することとなり、安倍「1強」を打ち崩すことなく、自公安定政権のまま新年を迎えるという結果になった。

そこで今年の部落解放運動のキーワードは3つだ。
その第1は、引き続き政治・選挙活動である。ポイントは、旧来型の発想から決別して大阪における政治勢力の結集を実現させる年にできるかどうかだ。
衆議院の選挙区に国会議員候補が各々存在し、その元で大阪府会議員候補や市会議員候補がピラミッド型で組織運営を担うという従来の組織体制を改編し、国と地方を分離した政治へのコミットの仕掛けを探る年にしたいと思っている。
市民主体の研究会やフォーラム、ラウンドテーブルなどが多種多様にとりくまれており、それを緩やかに包摂するネットワークが求められている。立憲民主党の結成に至る経過を見てもこうした多様な市民が参画可能な政治集団として従来型の政党からの大転換が求められており、それにつながる政治の枠組みをここ大阪において創りあげるために奮闘することである。
来るべき2019年初冬に予定されている大阪府知事選挙、大阪市長選挙を当面の政治・選挙活動の集大成と位置づけ、そこから逆算した闘いの積み上げが重要である。本年秋頃に予定されている「大阪都構想」是か非かを決める大阪市民による住民投票。さらには2019年4月実施予定の統一自治体選挙、7月参議院選挙という一大政治決戦勝利に向けて政治・選挙闘争に全力を挙げることだ。

第2のポイントは、「一支部一社会的起業」を興すと提案した運動方針をさらに飛躍的に発展させる年にすることだ。
今日の社会環境の変化や市民意識の変化により、従来当たり前とされてきた価値観の大転換がはじまっており、わたしたちの側も変化しなければ、立ち居かなくなるという危機感とともに、新たな社会環境の到来にこそ部落差別を根絶するチャンスがある。
そうした期待感から運動そのものが変化しなければならないと府連は訴え続けてきており、そのスローガンが「一支部一社会的起業」である。
従来、一極集中だった意思決定を多極に分散させるようになってきた。民主主義そのものが強制と保護という「上から」ではなく、自立と共生の「下から」の形に変化を遂げてきている。国際的な秩序も一国覇権主義から多国間協調主義の時代に突入して来ている。
経済の分野においても量的拡大から質的充実に、産業構造も産業社会から情報・サービス社会へと変化してきている。部落解放同盟という組織のありようについてもピラミッド型の縦組織からネットワーク型の横組織に変えなければならない時代が到来している。
こうした転換を象徴する2018年にしようではないか。

第3のポイントは、兎にも角にも財源づくりと人材の育成・発掘だ。
「求める」「要求する」運動から、自分たちで創る部落解放運動。このスローガンは正直まだまだかけ声倒れな現状である。結局、二の足を踏んでいるのは、それに先立つ“モノ”と運動を担う“ヒト”が用意できないからである。そこで、今年は資金は「活かす」、人材は「調達」するという事に大胆にチャレンジしたいと思っている。「人材」とは、地域におけるまちづくりのソーシャルワーカーが目標とはなるが、すぐに育成できるわけでもない。しかし、センターの各部局や地域の部落解放運動には、「宝物」が眠っているはずである。
この際、地域交流を思い切って人材の交流・トレードに発展させてみてはどうかなど、人材を育てるという発想から大胆に人材を調達するという事にチャレンジしてみる試みの年にしたい。
「資金」については、各地域におけるコミュニティ活動をさらに進展させることで、おのずと経済に結びついていくものもある。それを「コミュニティビジネス」や「ソーシャルビジネス」として発展させていくという手法をさらに探求していくことが求められている。
市場経済とは違い、「共同」や「助け合い」による運営を追求していくことだ。営利を追求するのではなく、資金を循環させるという発想で、資金を“活かす”という試みを各地区の創意工夫あるとりくみでスタートさせる年にしたい。

1922年全国水平社は設立された。「全国水平社」という名称は「人類は平等でなければならない。公平であるかどうかということを見るにはいろんな尺度がある。しかし、どんな計器を持ってきてもそれに勝るのが、水の平らかさである、それ以上の尺度はない」といった理念から決定されたと言われている。
現実は、深刻な縦社会のままの現状である。いやもっと深刻に時代は悪化の一途をたどっているのではないだろうか。格差社会は貧富の差をどんどんと押し広げ、社会に居場所をもたない人たちがさまよっている。こうした社会を横社会-水平な社会にしていくにはどうしたら良いのか。被差別部落にも同様の深刻な課題が突きつけられている。
“分かち合い”“お互い様”という精神で、デコボコではないまさに“水平”な社会を築くため、奮闘する年としたい。“水平”社会の実現にむけ、さまざまな人たちと“連帯・連携”する2018年にチャレンジしようではないか。