Vol.122 立憲民主党は「量より質」の政治探求を

安倍晋三首相は12日、首相官邸で記者団に「今年の漢字」に「北」が選ばれたことについて、「北朝鮮の脅威が大変現実的な、差し迫った脅威になった1年間だったということだ」との感想をのべた。続けて首相は、自身が選ぶ今年の漢字については「挑」を挙げ、「少子高齢化、北朝鮮の脅威に挑んでいく1年だった。この国難に挑むために総選挙に挑んだ年でもあった」と語ったそうだ。

一方、立憲民主党の枝野幸男代表は「今年の漢字」一文字について「私は『立』。立憲民主党の『立』だし多くの皆さんから『枝野、立て』と背中を押してもらった」と、10月の新党結成を振り返ったそうである。

「北」でも「挑」や「立」でも良いが、どうも世の中『変』な風に進んでいっているドンヨリとした空気を感じているのはわたしだけであろうか。

今回の選挙での共同通信の出口調査では、比例代表投票先を回答した人に安倍晋三首相を信頼しているかどうかを尋ねたところ「信頼していない」が51・0%で「信頼している」の44・1%を上回ったとのことだ。それなのに、自公で3分の2を超える圧勝だ。森友・加計疑惑で窮地に追い込まれた末に、事実上首相に与えられている解散権を悪用して、政権維持のための「最低・最悪の解散」に打って出たことには、自民党内からも多くの批判があった。本来であれば、選挙で国民の厳しい批判を受けて当然だったのに、小池さんの突然の排除論理の登場によって、結果的に救われただけだ。

そして何と言っても、この「変」の最大の被害者は、国民であり市民であろう。安倍政権に対する民意と選挙結果が余りに大きくかい離してしまったことは、日本の社会にとっても不幸な出来事ではないだろうか。しかも、今回の解散総選挙を通して多くの市民が安倍首相に抱いた不信は、臨時国会が終了してもなお拭えたとは言い切れない状態が続いている。

来年の通常国会においても、安倍政権に対して立憲民主党を中心とする野党勢力が、森友・加計問題への対応への批判を強めていけば、選挙結果への反動もあって、内閣支持率は低下していくことが予想される。そのような状況でも、自民党は結束して安倍政権を支え続けるのだろうか。来年の総裁選を控え、自民党内でどのような動きが出てくるのであろうか。

当然、憲法改正論議が高まっていくことが予想されるが、自民党が打ち出した憲法改正素案と安倍首相が今年の5月ににいきなり持ち出した「9条第3項」加憲論について、党内の合意が形成出来るのかどうかが大きな鍵のひとつのようである。

また、仮に党内合意が形成されたとしても、それに与党を組む公明党が同調するのであろうか。9条改憲の自民党との合意に踏み切ってしまうとは思えないとわたしは思うが・・・さらには、本番の国民投票で過半数の賛成を得るという可能性を考えれば、せめて国会議員のほとんどが賛成するという状況をつくりあげなければ、憲法改正は容易でないということになるだろう。

いずれにせよ今年の動向は、まさに「変」な世の中に突き進もうとする政治に対してストップをかける大きなチャンスの年でもあったのだが、結局は、野党分裂、希望の党に対する期待度の低迷などにより、自民党を利することとなり、安倍「1強」を打ち崩すことなく、自公安定政権のまま新たな年を迎えるという結果となった。

しかし、変化の「変」と捉えれば、結果的には民進党が分裂するかたちで立憲民主党が誕生した。政治に変化をもたらす意味でも期待度は大だ。理念や政策よりも安倍自民党一強政治を打ち破ることだけに主眼をおいて進められた党運営によって、いかに有権者から見放される結果となっていったかはみなさんも知るところである。ここはじっくり立憲民主党には、一言でいえば「量よりも質」という政治の探求にとりくんで欲しいと思う。

いい加減なところで妥協して数だけ増やせばいいという発想で党運営が進められるのではなく、この際、各都道府県本部は、本部のもとに総支部がピラミッド型に組織され、党所属の地方議員が組織運営を担うという旧来型の組織運営をあらため、立憲民主党は国会議員のみの政党として活動し、地方議員は立憲民主党の公認や推薦という枠組みを取っ払い、それこそ“いいね”ぐらいのノリで地域活動や市民活動にとりくむ人たちのネットワーク型の政党を期待したいと思っている。自立と共生のそれこそ“下から”の民主主義の創造を地で行く政党になることを期待もするし、わたしも奮闘したいと思っている。