Vol.229 西成の隣保館「ゆーとあい」のチャレンジに期待

 

西成区内の錚々たる面々がそろい踏みだ。
5月の14日土曜日、西成隣保館ゆ〜とあいで、西成区北西部、つまりは、同和地区の隣保館を中心としたさまざまな活動を紹介するという目的で、柳本顕衆議院議員や臣永正廣西成区長、さらには西成区選出の府会議員や市会議員、各町会の振興町会長、各種団体代表などの顔ぶれを集め、ゆ〜とあいで取り組まれている幾つかの活動が紹介された。

西成支部の山村くんが、ゆ〜とあいで活動している年間1700件を超える総合生活相談事業を紹介し、コロナ関連によるワクチン申し込みの代行や特別定額給付金の申請のサポート、さらには企業者向けの給付金の相談などの報告。ついで居住支援の事業として、住宅確保に配慮を要する入居と生活支援を目的に若者を対象としたシェアハウス「ステップ」の事業展開やくらしのセーフティストアとして毎週金曜日、食料品や生活用品、学用品など無償で提供し、貧困の連鎖を断ち切ることを目的とする事業展開を報告。さらには、子どもを対象とした居場所事業のとりくみ紹介など、ゆりかごから墓場まで多岐にわたってとりくんでいるさまざまな事業が報告された。

つぎに西田くんからは、今後ゆ〜とあいで重点的にとりくみたい活動が紹介され、そのコンセプトとして、ひとつは「未来を担う子ども・若者に『安心』と『希望』を届けるとりくみ」。ふたつめには、「住みたい・住んでよかった西成区の実現に向けたとりくみ」。みっつめには、「部落・西成差別を『しない・させない・許さない』人材育成のとりくみ」という3つの視点からなる考え方で、今後の方向性が提案された。

ひとつめの子ども・若者を対象としたとりくみとしては、「NPO法人絆ほーむ」を設立し、世代ごとの居場所事業をはじめ、皮革産業の継承・発展と人材育成の強化、和太鼓集団の発足などの居場所の創設に尽力するとの報告だ。ついで、若者が自立するまでの環境づくりの一環としての「食住の見守り付きシェアハウス」の登場だ。孤立防止や自立するまでの生活習慣の確立を目的に運営が2019年からスタートしている。今年は、女性向けシェアハウスのオープンをめざしている。さらには、活躍できる出番イコール仕事づくりである。軽作業や清掃、PCワークなど、地域で活躍できる場づくりにとりくんでいる。住みたい・住み続けたいための事業としては、市営住宅自治会への応援事業の推進だ。つまりは、共助のまちづくりの展開であり、単身高齢者が急増する市営住宅にあって、自治の崩壊を何とか食い止めようとする応援事業をゆ〜とあいの共助の事業として推進しようという試みである。

 コロナ禍による生活破壊や失業、家庭内DV問題など、生活の荒れがコロナ禍で一層悪影響をもたらしており、生活相談は後を絶たない現状である。ゆ〜とあいで取り組むこうした課題は、つねに緊急性を持っており、施策や制度の狭間で抜け落ちてしまう生活困窮者や貧困、制度がすり抜けこぼれ落ちていく社会的弱者など、差別と排除が被差別部落西成を覆い尽くそうと襲いかかってきている。

この社会課題に抗い、必死になって抵抗しているのが、隣保館ゆ〜とあいである。つまり、西成における部落解放運動の姿である。
議員の先生方や町会長などの面々に一生懸命自分たちの活動を紹介する西田くんや山村くんの姿に、同じ出身部落のひとりとして誇らしい思いを持ったものだ。手前味噌ではあるが、西成支部の活動も捨てたものでない。しっかり社会課題にチャレンジしようとする精神はまぎれもなく、今後の部落解放運動への期待の第一歩でもある。

“居住支援”という新しいキーワードの登場だ。
住宅確保が困難なひとへの配慮のため居住支援法人として登録し活動を展開するという制度である。府営住宅の一部を居住支援法人に管理等を委託し、若者の自立支援のためのシェアハウスに活用するなど、具体的な居住支援活動が広がっている。ウクライナの避難民の受け入れではないが、パートナーの暴力により、すぐにでも別居させる必要が出てきた場合など、新たな住居の確保が緊急で必要であり、こうしたシェアハウス事業の必要性が求められている。同和地区に存在する市営住宅には政策空き家も多く、活用されないまま時間だけが経過する住居も多い。しかし、緊急入居は、目的外使用となり入居へのハードルは高い。こうした制度の狭間を結びつける制度改正や新たな施策の実施など、社会課題解決への糸口はこうした実態を目の前にするしか問題点は浮き彫りにされない。やはり止まってはいけない。動き続けることが肝要のようだ。