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行き過ぎた市場任せやとにかく効率化という世の流れに警告を発したのが、コロナ感染による現代社会か。保健所が多すぎると言って大幅な縮小を行ったり、病院のベット数を減らしたり、看護師の人件費を削減したりと医療費の削減にこの間躍起になって取り組んできた政治のツケなのか、しっぺ返しのようにベット数の不足や医師、看護師等の不足などが顕著となり、とにかく民間に任せて効率化によるコストカットを実現せよとの政治の流れは、このコロナ禍に対しては、あまりにも無力で、新聞やテレビは、連日「医療崩壊」にあると報じて緊急事態の日本を映し出している。
とにもかくにも際限ない資本主義の利潤追求がもたらした悲劇であり、コロナ後の社会のありようを考えたとき、前回(Vol.202)で指摘した市場優先でも行政主導でもない公的責任は明確にしつつ市民がともに創る新たな“再公営化”という路線に世の中が舵を切るようにしていかなければならないとあらためて決意を強めるものである。
今年4月から大阪市営の公営住宅が指定管理となり、大阪市住宅供給公社(愛称:大阪市住まい公社)が運営管理に責任を持つこととなった。とにかく市内の公営住宅に居住している階層は、高齢者が多く、ひとり暮らしが多いというのが最大の特徴だ。つまり、自治会活動や地域活動が担い手不足という課題に直面しており、地域住民のつながりの希薄化も深刻な状況である。2年前には平野区の市営住宅で自治会の班長選びを巡って知的・精神の障がいがある男性が自殺するという痛ましい事件まで引き起こしており、町会や自治会などの共益活動に課題が噴出している今日この頃である。
しかも世の中はコロナ禍という不要不急の外出を制限するという事態である。このため、社会的・地域的に孤立しているため必要な支援が得られないひとたちが増加しているにもかかわらず、その気づきもままならないという深刻な事態だ。町会・自治会・住宅入居者組合など地域発祥のまちづくり活動もここに来て形骸化、活動能力低下は否めない現実である。
地域内での住民のつながりの希薄化が進み、さまざまな社会問題が惹起している地域まちづくり運動に一石を投じようと公営住宅の指定管理というタイミングと合わせて、府連と市内ブロック12の支部で浄財を持ち寄り「大阪まちづくりコミュニティ株式会社」を設立した。いうまでもなく地域におけるまちづくり運動の担い手づくりと孤立の解消、さまざまなコミュニティの支援が会社設立の意義であり、地域に根付いた自治的な老若男女が住み続けることのできる魅力あるまちづくりが追求したいテーマである。
そのヒントとして、コロナ禍による経済不況により生活に困窮しているひとたちが急増しているという現実を重く受け止め、とくにアルバイト等の不安定な業態で生計を立てている学生をはじめとした若年層が、さらに生活苦が増大し、中退や進学の断念といった事態を引き起こしかねない状態を一方でつくりだしており、困窮は顕著な問題であり、早急なる解決策を検討しなければならない。
そこで、生活に困窮している学生をはじめとした若年層に地域のまちづくり運動の担い手として活躍の場を提供できないかとの発想で、低下な家賃で住まいを提供することで生活の安定を図ってもらい、と同時に住民のつながりを強めるための支援活動に参加してもらうコミュニティ活性化の起爆剤としての役割を果たしてもらいたいと言うのは期待が大きすぎるだろうか(笑)。
つまり、若い人たちが“消費者”ではなく、まちづくりへの“参加者”としての市民活動を興せないかという壮大な社会実験としてチャレンジしたいと思っている。公だけでは住宅の管理に限界があり、民だけでは不十分な心のない運営になってしまう。それを市民がともに創るまちづくり運動の担い手としての役割を果たす、そんな市営住宅の“市民営化”を実現したい。
こうした下からの民主主義や合意形成のプロセスを「ミュニシパリズム」と呼び、“地域主義”や“自治体主義”とも呼ばれているらしい。政策決定プロセスを住民側に取り戻すという意味合いがあるのだと推測するが、従来の行政や大企業が支配する既存のシステムに抗う(あらがう)という意味合いが強いようだ。新自由主義的な政策が進む中、多くの地域で貧困・格差が広がり、地域経済も疲弊してい今こそ、大阪の各部落でコミュニティを基礎にした<コモン>(共有財)の実践に取り組みたいものだ。