府連が「部落探訪」の削除を求めた裁判で、鳥取ループ・示現舎が裁判を自分の居住地の
ニュース | 2024年10月31日
コラム | 2021年5月10日
2018年12月に法務省は人権擁護局調査救済課長名で、「インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立件及び処理について(依命通知)」という通達が出されている。
この通達が出されるに至る背景には、当然、ネット上の同和地区名の流布という問題が横たわっており、「不当な差別的取り扱いをすることを助長し、又は誘発する目的」がネット上で確認されたものについては、削除の対象にあることを再度地方法務局に徹底した内容といえる。
また、そればかりか、最近では差別解消目的だと標榜する体裁をとっているもの、紀行文であるとか、学術・研究のためとあたかも差別解消のためのホームページという体裁をとってはいるが、同和地区名や住所、まちの様子などを一方的に流布するという差別がネット上に拡散して来ている。
こうしたネット上に放置された同和地区の情報の一方的な公表や差別表現に対して、法的な拘束力を持って対処するという必要性をわたしたちは再三再四訴えてはいるが、いまだ法的規制の動きは遅々として進んでいないのが現状のようだ。靴の上から足を掻くようなものだが、ひとつひとつ法務局に対して削除要請していくという立法事実の積み上げが重要なとりくみのようである。
法務省は、紀行文や学術・研究というあたかも差別解消を標榜しているネット上の問題についても、「特定の者を同和地区の居住者、出身者等として識別すること自体が、プライバシー、名誉、不当に差別されない法的利益等を侵害するものと評価することができ、また、特定の者に対する識別ではなくても、特定の地域が同和地区である、又はあったと指摘する行為も、このような人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるものであるということができる」として、削除の対象であることを明らかにしている。
法務省が、“違法性がある”とまで指摘した点は評価できるものであり、違法なものは法的に罰しなければならないという視点に立てば、当然ネット上の差別は規制されるべきものであり、法的な裏付けが必要であることもこれからの課題であると言える。
この通達の最後には、「同和地区に関する識別情報の摘示は、目的の如何を問わず、それ自体が人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性があるものであり、原則として削除要請等の措置の対象とすべきものであるので 〜(中略)〜 従って処理されたい」と結ばれている。この指摘を最大限に活用し、ネット上の人権侵害情報の削除に活用すべきであることを再度訴えたいと思う。
しかし、どうしても納得のいかない点も散見される。それは、この通達に、以下のような指摘が存在するからである。
「部落差別は、その他の属性に基づく差別とは異なり、差別を行うこと自体を目的として政策的・人為的に創出したものであって、本来的にあるべからざる属性に基づく差別である」。
ここで指摘されている、“本来的にあるべからざる属性に基づく差別”とは一体どういう意味を持つものなのか。つまり、“あるべからざる”という表現は、部落出身者や部落にルーツを持つ者は、政策的・人為的につくられたもので、そもそも存在しないのだと捉えてしまうことが出来るが、実際どうなのかを法務省に確かめることが重要のようだ。
部落出身者や部落に何らかのルーツを持つ当事者は、実は存在しないのであり、無いものをいちいち差別してはダメですよと聞こえてしまう。現在においても、その地域がエタ村や非人部落だと断定し、そこに居住するひとたちを差別してはダメですよといった国の解釈のように聞こえてならないのである。
わたしたちは、当事者性を持った団体であり、“全国に散在するわが特殊部落民の団結”の証しが、部落解放同盟だとの自負を持っている。それが、「昔はそういう人たちもいたかもしれないが、今はいないのですよ。その地域だからと差別してはいけません」と捉えることの出来る国の解釈には問題が多すぎると指摘したい。
被差別部落は存在し、部落出身者や部落にルーツを持つ者も存在する。存在があるからこそ、避けようとする差別や関わりたくないとする差別が存在するのである。ゴーストのようにありもしない差別を問題にしているのではない。アイデンティティを持った当事者がいることを決して国は否定してはならない。