Vol.179 国際的常識と逆行する日本政府のコロナ対策

俳優で、情報番組の司会もつとめた岡江久美子さんが亡くなったとの報道。新型コロナが猛威を振るっている。発熱から三日後に容体が急変したようだ。発熱してすぐにPCR検査をしていたら手遅れにならなかったのではないかと言った意見が、ネット上を賑わしている。

わたしも当初からなぜ、発熱してすぐにPCR検査を実施しないのか。となり韓国ではドライブスルーによるPCR検査が実施されているにも関わらずだ。当初から検査拡大の重要性が唱えられてきたはずだ。
事の発端は、ダイヤモンドプリンセス号だ。乗員乗客3711人に対して273人にしか検査を実施しなかった。その上で、全員を狭い船内に監禁状態とした。結果、そのためにダイヤモンドプリンセスの悲劇が生み出されたと言って良いだろう。世界からは「人体実験船」とまで酷評された。

安倍政権にとって、新型コロナウイルス感染対策のミッションは、感染から国民の生命を守り、経済への影響など社会的な損失を最小化することにあることは言うまでもない。
しかし、現実は、経緯も不明なまま国立感染研関係者中心の「専門家会議」によって、「PCR検査よりクラスター対策」との方針がとられた。この時点での国際的なスタンダードは、「徹底してPCR検査を行うことにより、感染の実態を把握し、感染者を何らかの方法で隔離して感染拡大を防ぐ」という「国際的常識」とは逆行する対応が日本政府によって進められたことになる。
検査数が諸外国と比較して圧倒的に少ないことについて、安倍首相や加藤厚労大臣は、「検査数を増やすように指示しているが増えない原因がわからない」との答弁を繰り返してきた。しかし、検査が増えない根本的な原因は、「37.5度の熱が4日間続かなければ検査の対象にならない」ことや「感染者をすべて入院して隔離する」ことを前提とする制度の枠組みに問題があったわけであり、それは、政府が構築したシステム自体の問題である。

大量の検査を迅速に行い、感染拡大を抑制してきたドイツ・韓国等とは異なり、これまでPCR検査数が著しく抑制されてきた。結果、後手後手の対応が、「一部に限定した30万円」「たった二枚の布マスク」、そして「優雅に家での休息を披露する一国の首相」という失態の三部作と重なり、致命的なコロナ対策として各国から揶揄されている。

日本国内には約100社の民間検査会社があるそうで、そこに900の検査センターが運営されており、一日で2万人以上のPCR検査が可能だと言われているにもかかわらず、なぜ、民間機関を利用しないのか?コロナ問題最大の疑惑である。
感染研のルーツは、戦前の伝染病研究所であり、戦後GHQの指示で国立予防衛生研究所となり、後に国立感染症研究所となる。
新型コロナウイルスのデータを感染研が独占し、国内の限定されたメーカーと組むことによって、ワクチン開発につなげていく。そのためには貴重なデータであるコロナウイルスに関わる情報を民間の機関に委ねることはみすみす大規模な利益を市場に流失してしまうことになるという自前のワクチン開発主義的な考え方が、今なお権力サイドには強く残っていると警鐘を鳴らす専門家も多い。
日本の医療のレベルならすべての膨大な情報を公開し、全世界的なワクチン開発に日本も大きく貢献できるチャンスでもあり、情報を一元的に管理し、利益のみを得ようとするための限定されたPCR検査から、医師が必要と思われる患者すべてのPCR検査が可能な体制に早急に転換すべきである。
ここに来てようやく来週から、「PCR検査センター」が設置されて大幅に検査数が増加することで、ようやく、これまでより感染の実態の把握が進むことを期待したい。

慶応義塾大学病院が、無症状の患者67人にPCR検査を行ったところ、4人(5.97%)が陽性者
だったと公表した。つまり、6%の自覚なき感染者が野放しの状態で社会生活をしており、感染を拡大させ深刻な事態を引き起こしている可能性を持っているのが、コロナウイルスのやっかいな点だ。だからこそPCR検査を徹底し、陽性の人は、借り上げたホテルに2週間は隔離してもらう以外に方法はない。それを誤った方針をとり後手後手に回ったために感染拡大を広げた罪は重い。
緊急事態は、情報を公開し、スピーディーな対応がいつにも増して重要だ。