Vol.129 悪質なデマ 森友文書の「特殊性」は同和絡み?

森友学園への国有地売却に関する決裁文書が改ざんされていた事実を財務省が認めるという前代未聞の出来事で国会は風雲急を告げている。安倍政権の「隠蔽(いんぺい)体質」のあらわれか、財務省にとどまらず、政権全体の責任が免れない事態にまで発展してきている。

この決裁文書の改ざんにおいて、内閣支持率が急落、安倍氏・麻生氏の責任問題にまで及んでいることは周知の事実ではあるが、この窮地のなか、責任転嫁も甚だしい事態が発覚した。

当初の文書に記載されていた交渉経緯や契約の「特殊性」といった文言が、国会議員らに昨年開示された文書からは削除されていた。この「特殊性」という文言を同和問題と絡めるというきわめて由々しき事態が起こっている。財務省の責任や内閣への攻撃をそらすために、森友事件で指摘されている“特殊性”とは、あの土地が「同和絡みの案件」であるという意味だ、との主張を繰り返す輩が登場してきているのである。

当然のことながら「特殊性」は当然「安倍昭恵夫人の関与」のことを指している。「同和絡み」とは許されないデマであり、部落差別を利用した悪質なヘイト発言でもある。この誹謗中傷発言を繰り返している確信犯がネット上でも次々と明らかになってきており、厳しい対応を求める声が上がっている。

デマは次のようなものだ。
「本件を理解できない原因。改竄する合理的な理由がない。昭恵さんの名前は籠池が出しただけだし、『特殊性』もゴミにからむ同和の問題だろう。価格交渉したのも当たり前で、佐川理財局長が答弁を修正すればすむ話。それなのに答弁資料を改竄するというのは信じられない」

ゴミにからむ同和の問題とは、いったい何を意味しているのか。こじつけも甚だしい事実誤認であり、何の根拠も存在しないデマ宣伝をネット上にばらまく言語道断の部落差別扇動事件だ。

さらにインターネット放送の番組においても、「隣の土地とかあれ見ると、あのー、同和系のね、あのー、まあ、業者とかね、いろいろ入ってるのを見れば、どういうことかってのも想像つくと思いますけどね」「つきますね」「非常にまずいんです、だから」「特殊性っていうのをね……でも、それね、この話ってね、実はね、地上波ではね、NGなんですよ」と、あたかも「特殊性とは同和のこと」だと推察させるきわめていい加減な放送が垂れ流されている。許し難い部落差別発言である。

あの土地を「同和の土地」だから“特殊”だとする根拠は何なのか。それが8億円の値引きにつながっているというのならなおさら事実を示し、根拠を明らかにすべきである。部落差別を利用して安倍政権への批判から目をそらせるきわめて悪質な差別発言である。

さらには、昨年放送された別の番組でも「関西の3つのタブー(アンタッチャブル)」と題して、1.暴力団、2.在日問題、3.同和問題と発言し、「産廃・産業廃棄物処理、あるいは産廃をめぐる事業・商売が大きな比重を占めている。今回の問題のここが肝」「ここに触る事が出来ないが故に、だから分かりにくくなっているし、ピントはズレてるし、間違った結論を導き出している」との発言がなされている。完全なフェイク発言であり、ピントがずれているのは、無責任なジャーナリストであり評論家の方だ。

権力の不正を隠蔽するために、部落差別を利用し、差別デマを垂れ流すという卑劣な行為を許すわけにはいかない。

「週刊文春」(文藝春秋)では、今井尚哉首相秘書官が文書改ざん問題に対する緊急対応を取り仕切り、さまざまな情報を流しており、そのひとつとして「特殊性は人権問題に配慮してそう書いた」との情報が流布され、事態の矮小化を図ったと指摘されている。ウェブマガジンの「LITERA」では、それが新聞・テレビの政治部記者に流れ、さらに安倍応援団の評論家やジャーナリストに伝わったと報じられている。

部落差別を利用し、自らの疑惑に蓋をしようとする政権の差別体質そのものが糾されるべきだ。部落解放同盟として、今回の「『本件の特殊性』は同和絡みの土地」という情報は明々白々な虚偽、まったくのデマゴギーであり、許すべからざる意図的なヘイト発言であることを指摘し断固抗議するものである。