Vol.128 三方良し 「フードシェアリング」の可能性

「ワークシェアリング」という言葉を最近耳にする方も多いだろう。「ワークシェアリング」とは「仕事の分かち合い」と訳され、労働者ひとり当たりの労働時間を短縮することにより、社会全体の雇用者数を増やそうとする政策のことだ。労働者ひとり当たりの労働時間を短縮することにより、社会全体の雇用者数を増やそうとする意味でもある。

この言葉に引っ張られるように最近、「フードシェアリング」という言葉が使われはじめている。ワークシェアリングが「仕事の分かち合い」ならば、「フードシェアリング」は、それこそ、“もったいない”を“ありがとう”に変えるお裾分け(おすそわけ)の精神だ。農林水産省が発表してる日本の食糧廃棄の実質量は、年間1700万㌧と言われており、廃棄物の出元としては、一般家庭から839万㌧、食品関連事業者からが822万㌧でおおよそ半分半分という現状だ。この棄てられている食糧廃棄の中でも、まったく問題なく安全に食べられるモノのことを“フードロス”と表現されており、日本のフードロスは年間621万㌧。これは、日本のコメの年間生産量の4分の3の量に匹敵しており、全世界の食料援助に必要とされている320万㌧の約2倍もの食品ロスを生みだしているという計算になる。

この膨大な量の食品ロスを少しでも軽減しようというとりくみが日本各地で展開されていることは周知の事実であり、ふーどばんくOSAKAも末席であるが、その一端を担っている。しかし、コンビニ弁当やサンドイッチといった販売期限と消費期限との間隔が短すぎて配送できない食品は、フードバンクとして取り扱えない食品として残念ながら手の届かない苦手なテーマとなっている。全国各地のフードバンクも食品ロス改善のためにも販売期限と消費期限との間隔が短い食品を廃棄するのではなく、レスキューするための新たな試みについて試行錯誤が繰り返されているが、特効薬が見つからない課題でもある。

この難しい分野にチャレンジしようというのが、「フードシェアリング」だ。最後まで美味しく食べてほしいという、そんな“つくり手”の思いを残さず“食べ手”まで届けるサービスのことである。一例を紹介すればこのような流れになる。

ある定食屋さんが閉店を前にこのままでは売れ残ってしまいそうな○○定食10食分について、“フードシェアリング”を実施しているNPOのホームページに値段(売れ残りそうな定食のため定価の半額等)を設定する。また、引き取り時間と定食屋さんの現在地などを設定すれば、つくり手としての仕事は完了。あとは、登録しているお腹が空いたユーザが、そのホームページにアクセスし、「あのお店なら歩いていける。この値段ならラッキー。しかも食品ロス削減に貢献できる」とチェックを入れればマッチングが成立というシステムだ。決済もクレジットで行うというフローになっている。

このシステムを可能にしているのは、歩いて取りに行けるという距離、つまり地域がコンセプトになって「フードシェアリング」がとりくまれているのが肝のようだ。地域といえば、解放同盟の出番である。中学校区ぐらいをひとつの守備範囲にして、コンビニや地域の定食屋さんやレストラン、お総菜などを販売する食料品店などが、支部の呼びかけで結成された「フードシェアリング○○」に登録してもらい、「急遽5時に店をしめないといけなくなった。売れ残りのコロッケが50個出そう」や「カラダの調子が今ひとつ。店を閉店したいが、朝つくったサンドイッチが30個まだ残ってる」といった緊急事態にレスキュー隊として「フードシェアリング○○」が登場。即座に値段の確認がおこなわれ、コロッケは通常50円のところを20円で、サンドイッチが通常280円のところを120円との値段が設定され、あとは引き取り時間、店の住所などの情報をホームページに会員向けに発信、すると地域のユーザから申し込みがあり、廃棄の危機にあった食品が直前で、人の口にすべて運ばれ食品ロスを出すことなくお店でつくった食品がすべて完売されるという仕組みである。

「つくり手」である店側にとっても廃棄削減につながり、売上アップとコスト削減、ブランド力アップと新規顧客の獲得というメリットを生みだし、また「食べ手」にとっても手軽な社会貢献であり、新しいお店の発見にもつながり、おまけに安価な価格で購入できるというメリットがある。さらにフードロスの削減、エネルギー効率のアップ、市民の社会意識の向上といった地球にも優しいトライアングルが形成されるのではないだろうか。「つくり手」よし、「食べ手」よし、「地球に」よしという三方良しで、地域を活性化される。このとりくみ一計をめぐらす価値がありそうだと思うのだが・・・