Vol.127 「おすそわけ食マーケット」のめざすもの

ふーどばんくOSAKAが大阪市内のサテライトと位置づけている平野区で、「おすそわけ食マーケット」と称して、ふーどばんくパントリーが2月3日に開かれた。「パントリー」とは、食品を蓄えておく小部屋のことを指しており、食品を無料で提供する活動のことである。経済的困窮により、十分な食事をとれない状況にある個人・家族に対してパントリー(小部屋)に来てもらって好きな食品を無料で持ち帰ってもらおうという活動だ。

“フードバンクによるコンビニ”ともいうべき活動であり、大阪においても平野を皮切りに大阪各地で取り組んでいこうと思っている。平野でスタートした「おすそわけ食マーケット」で利用者による簡単なアンケートを実施し、約100名の方々に協力してもらった。特徴的な部分のみ紹介しよう。

「ご自宅で調理はできますか?」との問いに対して、「できる」が83人、「できない」が15人となっている。電気、水道、ガスといったライフラインが整っており、調理家電が存在しているが、本人が調理できないのか、それともライフラインそのものが停止されている状態なのかは不明であるが、約全体の15%程度の方々は、いわゆるコンビニ弁当などで空腹を紛らわしており、家で調理したものを食べているという状態にはないという調査結果があらわれた。

また、「ご家族の人数は?」の問いに対しては、1人家族が15人、2人家族が47人、3人家族が13人、4人家族が17人、5人家族が6人という結果となっている。社会的困難を抱える世帯に「ひとり暮らし」が多いのでは、というわたしたちの予想とは裏腹に、生活困窮の世帯動向は、世帯人数にあらわれるというよりは、それぞれの家族の状況で異なるという調査結果が出たことになる。しかし、一方で、アンケートに答えてもらった男女の人数は、男性31人に対して、女性52人となっており、生活に困窮しているひとり暮らしの男性への参加の呼びかけが充分に果たされているのかという点については、今後の課題でもある。

「生活が苦しいことを区役所などに相談しましたか?」との問いに対しては、「相談した」が19人で、「相談していない」が81人と圧倒的に相談していない人の割合が高い数字を示している。とくに「相談していない」理由に、「相談するほどでもない」と答えたひとが、67人にものぼっており、相談機関そのものへの敷居の高さを伺われる数字ではないだろうか。最後の問いで、「また、この活動があれば利用したいですか?」と聞いたところ、「はい」が95人、「いいえ」が2人と答えており、活動の継続が求められているというアンケート結果であった。

自由記載の欄では、「仕事がなかなか見つからない(40代)」「生活が苦しい(70代)」「睡眠不足(40代)」「病気のため生活が苦しい(70代)」「年金だけの暮らしなので将来が不安(60代)」「年金+給料ですが、ローンの支払いがまだ数年ある(50代)」など、さすがに深刻な経済的な側面や健康面での不安が自由記入欄への書き込みである。食を提供するというふーどばんくOSAKAによる“ふーどばんくパントリー”「おすそわけ食マーケット」は、それこそ“おすそわけ”であり、自分達がもらったものを他の人に分けることを意味している。フードバンクの活動は、食品ロス削減という目的からスタートしたとりくみではあるが、飽食の社会への警鐘という点も忘れてはならない課題でもある。余分な消費や蓄積を慎み、自らの分をほどほどにして、裾(すそ)を(切りつめて他人に)分ける。自分が働いて手に入れたものでも、自分だけの力で得たものではなく、自然や社会からのいただきものとして捉え、そういう感謝の気持ちを込めて、それを自分だけでいただくのは“もったいない”の精神で、その一部を“おすそわけ”するという主旨でもある。

「おすそわけ食マーケット」に集ったすべてのひとの生活が、明日食う米さえままならないという緊急的な生活困窮世帯ではないかも知れない。しかし、飽食の時代にあって、食べたいだけ食べられて、食物に不自由しない。日常生活に不自由がないという恵まれた世帯ではない。どこかで課題を持ち、しかし、しっかりと生きようと踏ん張っている人たちの生活の姿が、そこには現れているというのが現実だ。

最後にこんな感想が寄せられた。「ふーどばんくを受けると受けないのとではとても大きく生活に影響はあると思います。本当にこういう支援があると助かります。子どもたちは食べざかり育ちざかりの時なので、ふーどばんくさんとつながりを持てた事に感謝しています。」

“つながりづくり”−まさに「そだね〜」!