相次ぐ問題発言にみる政治家の薄っぺらな社会認識

水平時評 府連書記長 赤井隆史

東京都議会で、とんでもない暴言が飛び出した。6月18日の都議会の一般質問で、みんなの党の塩村文夏議員の質問中に、「自分が早く結婚すればいいんじゃないか」などとヤジが飛んだ。この顛末を記した塩村議員のツイッターは3万回以上のリツイートがされるなど、かなり話題になり、NHKなどでも報道された。

塩村議員は20日、都議会議長に地方自治法第133条に基づく処分要求書を提出したが、それによれば、「自分が早く結婚すればいいんじゃないか」、「まずは、自分が産めよ」、「子どもを産めないのか」、「子どももいないのに」とのヤジだったようだ。世論の大きな批判を受けて、自民党の鈴木章浩議員が「早く結婚すれば」のヤジについてのみ認めて謝罪したが、その他のヤジについてはいまだ「犯人」は不明のままだ。

まあ、誰が聞いても呆れるヤジだ。言い訳は全く無理だ。塩村議員が過去にテレビ番組に出演したことなどを理由としてヤジの正当化を図る意見も例外的にあるが、問題外である。海外でも、この事件は報じられている。日本では、「品位がない」とかいわれているが、海外では“sexist abuse”(性的虐待)とかの強い表現になっている。東京五輪を控えて、対外イメージが心配されている。

さすがに、石破茂自民党幹事長も、テレビ番組で、「誰であれ『自分でした』と言っておわびすべきだ。仮にわが党であったとすれば、党としておわびをしなければいけない。大変申し訳ない」と言わざるを得なくなった。
都議会は、塩村議員からの処分要求書をヤジ発言者が特定されていないという理由で受理しなかったが、大きな批判の世論を背景に、声紋分析し発言者を特定するといった動きも出てきたことから、観念して名乗り出たのだろう。

内閣の中枢幹部による問題発言も出た。
麻生太郎副総理兼財務相が6月21日、宇都宮市であった自民党栃木県連の会合で、集団的自衛権に言及した際、いじめをたとえに出し「勉強ができない、けんかが弱い、金持ちの子、これがいちばんやられる」とのべた。
その上で「日本は間違いなく軍事力がある。しかしきちっと外から見えてない。金はあるということは分かってる。いちばん集中攻撃されやすい国が日本」と持論を展開。「抑止力は基本的に力がないとできない。その力を使うという国民的合意がいる」と主張した。

この一方的な決めつけ、暴言ともいえる麻生発言は、きわめて短絡的で、低レベルである政治家としての「質」を物語っている。

現代社会は複雑で重層的に形成されている。にも関わらず、政治は短絡的に“白か、黒か”といった二者択一の答えをせまろうとしているところに矛盾があると思っている。石原伸晃環境相の東京電力福島第1原発事故にともなう中間貯蔵施設建設をめぐる「最後は金目」発言も同じであり、多様化した複雑な社会を認識していない発言である。

様々な困難の中でも結婚というスタイルを求めず、子どもを出産し、育てるという選択をする女性が数多く存在している。また結婚していてもそれぞれが多様な生き方を選び、男性が“主夫”という役割を果たす夫婦も数多く存在している。

“いじめ”の原因も、それこそ多様であり、勉強ができるできないだけの問題ではない。原発問題も同じ。東京電力・福島第1原発の重大な事故への恐怖を、貯蔵施設建設が“最後は金”で片付けられる問題ではないことは、普通に考えれば誰でもわかる。

折しもこれらの発言の主はすべて自民党の議員である。複雑で、多様化・重層化している社会だという認識がなく、短絡的に決めつけてしまっている。つまり、多元化してきている民意に、政治がついてこれていないのが現状だ。この“民意と政治のねじれ”現象が、これからの政治を考える大事なポイントであることを訴えたい。