被害者のものではない 狭山事件の「万年筆」で新証拠

狭山弁護団は8月29日にひらかれた三者協議後の記者会見で有罪の有力な証拠とされてきた「万年筆」が被害者のものではないことを科学的に証明する鑑定書を新証拠として22日に東京高裁に提出したことを明らかにした。

記者会見する石川さんと弁護団

石川さんの「自白」にもとづいて発見された「万年筆」には、被害者が当日まで使用していたものと違う色のインクが入っていた。第1次、2次再審は事件直前に別のインクに入れ替えたことも否定できないという「可能性」を根拠に確定判決を維持してきた。

2013年7月の証拠開示で被害者のインク瓶がはじめて証拠開示され、これまで「ライトブルー」と呼ばれてきたものが、「ジェットブルー」という商品名のインクであることがわかった。

今回、弁護団は当時の科学警察研究所が行った鑑定と同じ方法で実証実験を行い、別のインク(ブルーブラック)を補充すると以前に入っていたインク(ジェットブルー)の痕跡が残ることを科学的に証明した。石川さん宅から発見された「万年筆」が被害者のものではないことを裏付ける重要な新証拠だ。

「万年筆」は、2度にわたる26人もの捜査員による徹底した家宅捜索のあと、3回目の捜索で数人の捜査員によりわずか24分で発見された。発見場所のお勝手の鴨居は高さ175・9センチ、奥行き8・5センチと、簡単に目に止まる場所で徹底した家宅捜索で見落とすことはありえない。

「万年筆」からはインクを入れる内部のスポイド部分を含めて、被害者の指紋は一切検出されておらず、「万年筆」発見のもととなった石川さんが書いた略図にも改ざんの疑いが明らかになっている。

さらに、1回目の家宅捜索に参加した元刑事は「踏み台のようなものをおいて、その上にのぼり捜索した」「鴨居の奥のほうまで見えるが、なにもなかった」「ずっとあとになって、鴨居から万年筆が発見されたといわれ、びっくりした」「私が間違いなく探して、何もなかったところなのに、本当に不思議に思った」と証言している。

証拠の万年筆は明らかに偽物である。新証拠をもとに東京高裁がただちに事実調べ、再審開始をおこなうよう世論を高めよう。

●特集・狭山事件50年