Vol.104 第64回府連大会方針から見る課題と展望

大阪府連64回大会の運動方針が公表された。
わたしなりの解釈は、4つの○○づくりにとりくんでいこうと大会方針は訴えているんだと理解した。

そのひとつは、「仕組み」づくりである。「部落差別解消推進法」が成立した今日時点における“救済法”や“差別禁止法”という人権立法をどのように展望していくのかという点にある。その意味からも「部落差別解消推進法」をどのように具体化を迫っていくのか。大阪で試みようとしている被害者救済のための民間基金などにそのヒントがあらわれているように思う。県レベルでの議論が開始されようとしている推進法を補完する“条例”の検討など、差別撤廃への仕組みづくりをわが方から提案すべきだと大会方針は主張している。

ふたつめは、部落解放運動をとりくむ上での「まち」づくりである。事業法といわれた同和対策法終結から15年が経過した。大阪の各部落には15を超える社会福祉法人が設立され「つばめ会」が誕生した。また、各種NPO法人も設立され、株式会社や一般社団法人など、多種多様な市民活動が育まれ、まちづくり運動も“多様化”してきている。同和対策華やかしき頃とは違い、生活実態も部落間格差が生じてきており、多様化・多元化の時代である。
企業連と共済活動ぐらいが共通した大阪の部落解放運動といえる現状にあり一支部一社会的起業とは訴えたが、まだ本格化しているとはいえない現状だ。大阪の各部落を横断するような横串で貫く共生社会実現のためのまちづくり運動のテーマ設定が必要だと大会方針は主張する。

みっつめは、「ひと」づくりある。政治も市民活動も新しい次代を担う人材を模索している。水平社を創立させた青年活動家は、融和運動を廃し、「人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた」ならば、「吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然」だと立ち上がった。つぎの時代を担う若い人たちの集団運動は、部落解放同盟という枠を超え、共生社会実現でつながり合おうとする集団運動を興すことを期待したい。そのためには、5年後の2022年という水平社100年に向けて、大阪府連は、飛躍の前の条件整備にむけ、多種多様な市民活動や社会事業を提案・推進させていくことにつとめていくと運動方針は主張している。

よっつめは、「つながり」づくりだ。被差別部落の出身であるという出自は、どこに住んでいても心のどこかで引っかかっていたり、結婚や就職の際に気になる点となっている。しかもそうした心模様は、部落に居住しているメンバーより、部落を何らかの理由で出ていったメンバーの方が強く気にしている場合が多い。鳥取ループをはじめとするネット上での部落の地名公表などにより、“生まれ”を隠し通せるという時代ではなくなってきているというSNS社会がその背景にあることは言わずもがなである。
つまり、ネット社会が差別や分断に悪用されているという事実に対して、法的規制の必要性や法規範の高まりなどを醸成させていくことも重要なことではあるが、むしろわたしたちの側もSNSを駆使したネットワークづくりやつながりづくりを通じた新たな人間関係を構築する場の提供など、情報共有や交流促進のための“居場所”づくりの創設をめざすということも視野に入れる必要があるだろう。わが組織の綱領・規約からいえば、なかなか部落外に居を構えるひとたちの組織化は難しい面を持っている。部落出身というアイデンティティでつながる新たなネットワークづくり、つまり、つながりづくりにとりくんでいくことを運動方針は主張している。

運動方針をわたしなりに解説してみた。
「部落差別解消推進法」が施行されてはじめての府連大会だ。つまり、部落差別解消という法律があるもとでの大会である。部落差別がいまなお存在するということを認め、それが社会悪であると定義されたのである。ここからは、どう解決を図っていくのか。当事者としての意見を大いに大会でたたかわせようではないか。