公と民の間に橋を架ける「ふーどばんくOSAKA」の挑戦

水平時評 府連書記長 赤井隆史

行政は、法律が根拠となり、条例や制度、要綱等による定めにしたがい運営されるものであり、法を逸脱したり、犯したりすることが出来ないことは当然のことである。
企業は、営利が目的となり、儲からないことなどには当然、手を出さないことは言うまでもない。

2008年、大阪府知事に就任した前橋下知事は、知事就任後すぐに財政難による非常事態を宣言し、当面は、義務的経費を中心とした暫定予算のみでのりきるよう指示するとともに、財政再建プログラムの作成に着手した。そのプログラムにおいて、夜間中学生の補食給食(ほとんどが菓子パンと牛乳)の補助金が打ち切られるという事態が発生した。仕事を終え、休む間もなく直接学校にかけつける夜間中学校の生徒にとって、補食給食は、健康上の理由からもなくてはならないものであることは言うまでもない。

戦争により、学校へ行けなかった現実や、貧困、障がいなどによる、さまざまな事情によって、義務教育を受ける権利が奪われてきたのであり、ようやくたどり着いた夜間中学校で、連日必死になって学んでいる生徒さん達に補食給食の提供は、それこそ行政の責任であり、学ぶ権利の保障という観点からも補助制度は存続されるべきものである。

それを財政再建という名の下に、一方的に廃止するという大阪府の姿勢は、教育を受ける権利を侵害する行為であり、行政責任の放棄そのものである。撤回のための署名行動などわたしたちとしても積極的に取り組んでいきたいと考えている。

しかし、一方で行政責任を追及するという姿勢は、断固堅持しなければならないことではあるが、ここは一度、公と民のあいだに橋を架けるという発想で、補食給食をわたしたちが取り組むふーどばんくOSAKAとの連携で、公に縛られている制度に風穴をあけることができないか、新たな試みにチャレンジしたいと思っている。

行政は、法律で縛られ「財政再建プログラム」という政策において、補食給食の予算化が困難という答えしか出せないわけであり、政策の転換や復活させるための市民運動が必要なことは当然ではあるが、財政的に厳しいという行政事情も考慮した上で、ではわたしたちで何が出来るのか、考えてみようという発想の転換が、労働運動や市民運動にも求められているのではないか、という提案である。

「行政にやってもらう」から、「行政とともにやってみよう」という発想を市民運動にもとりいれ、ふーどばんくOSAKAと行政、夜間中学校、ボランティアなどのコラボで、補食給食の完全復活を模索してはどうか、チャレンジしてみる価値があるのではないかと思っている。

行政万能論や行政依存という発想から抜け出し、公と民とのあいだに橋を架けるソーシャルビジネスが、若者の間で産声を上げようとしている。こうした活動に学び、補食給食という制度を行政と民間とのコラボレーションで実現してみるという活動に挑戦してみることも、ふーどばんくOSAKAとして、ワンランク上のNPOに成長することにつながっていくものと確信している。

「わたしたちは戦争で貧困になり、勉強もできずつらく苦しい生活をのりこえ、やっと夜間中学校にたどりつきました。補食給食をうちきられくやしい思いでいっぱいです。(東生野夜間中学校)」

「学びは、われわれの夢・希望・生きがいです。心の病からすくわれ、今はいきいきと学校に通う自分がじまんです。67才でやっとたどりついた夜中。学ぶことでどれだけ自信がついたか。悩まずにもっと笑顔で学べるよう。就学援助と補食をお願いします。(天王寺夜間中学校)」

生徒さん達の生の声である。行政と繰り返し交渉し、行政責任を認めさせようとされている多くの人達の活動に敬意を表する。しかし、制度はなかなか突破できるものではなく、補食給食の実施には至っていない。そんな生徒さん達に届けることが出来る市民活動・ふーどばんくOSAKAが現在は存在しているのである。これを使わない手はないと思う。知恵と工夫で、乗り越えることができないか。いざ挑戦だ。