フードバンク活動を通したある中学生の出会い

水平時評 府連書記長 赤井隆史

この6月から「ふーどばんくOSAKA」に中学生がやってくる。
ふーどばんくOSAKAの食品提供先に母子生活支援施設があり、そこと関係があった中学生が、ふーどばんくOSAKAの活動にボランティアで体験・協力しようという試みである。

というと単に「中学生によるボランティア体験」のようだがそうではない。この中学生は母子家庭で育ち、母子生活支援施設で生活した経験を持っている。現在は、施設を出て母親と生活をしているようだが、生活保護を受けて慎ましい生活を送っているようだ。

中学校へは不登校なのだが、施設で働く人たちとの人間関係に居心地が良いのか、施設へちょくちょくやってくるという日常のようである。本人は、高校への進学を希望しているようだが、夢と現実とのギャップに戸惑いを持ちながら多感な生活を送っているようである。

施設の職員さんが、フードバンクの活動に接するようになったことがきっかけで、この中学生にフードバンクの活動を経験させることが肝要だと思い、ふーどばんくOSAKAに相談があり、6月からボランティアでフードバンク活動を体験することが決まった。

生活保護世帯の生活ぶりは、食生活がつねに安定しているという状態でとは言い難く、生活保護費受給日から遠のけば遠のくほど、食生活が不安定に陥ることは容易に想像がつく。この中学生もしかり。生活保護費の受給から日数が経過すればするほど食生活が不安定になり、きちっとした料理を口にすることが出来ないときがあり、心配した施設の職員さんが、ふーどばんくOSAKAから提供される食品で一時的な食生活の不安定さを改善していたようである。
こうしたことがきっかけとなりこの中学生は、フードバンクの活動に関心を持つようになったようである。

わたしは、部落解放運動の中で、「たったひとりに現れた差別の現実」というフレーズを頻繁に語ったり、方針として書いたりしてきた。それが、フードバンク活動という実践を通じて、現実のものとしてわたしの前に現れてきたのである。不登校、不安定な食生活、不規則な生活習慣などの課題が、たったひとりの中学生に現れている。まさに「社会的排除の現実」であり、食品を提供した一歩からスタートし、母子寮の方との人間関係を通じて課題に直面したのである。

ここからが部落解放運動で培ってきた真骨頂を発揮する時であると思っている。寄って集ってこの中学生を徹底して支援できたらと思っている。これは部落解放運動の「強み」を生かせる分野でもあるからである。

まずは、“ケース会議”をひらき、学業の機会をどう確保するか、食育の課題をどう安定させるのか。不登校からどう脱却していくのか。そして、最後には母親の不安定な生活の改善を図り、働けるまでに伴走型の応援が出来るのか。教育、食育、福祉、労働、雇用という部落解放運動がこれまで取り組んできた横断的な課題の解決。たったひとりの中学生から見えてきた社会的排除の現実にどう取り組んでいけるのか

フードバンク活動を展開したからこそ見えてきた社会的排除の課題である。実践を通じてあらためて直面してきた課題といえる。まさに、“先ず隗(かい)より始めよ”だ。