大阪市奨学金裁判が和解 「遺憾の意」受け苦渋の決断

大阪市の奨学金裁判は4月17日、大阪高裁で和解が成立した。大阪市が実質給付としてきた奨学金について、自らの不手際の結果を奨学生に押しつける形で突然返還を求めたことについて、「適切さを欠いた」などと遺憾の意を表明したことを受けて、奨学生が苦渋の決断で和解を受け入れた。府連は不当な返還決定と闘った奨学生を支援するためにカンパ活動にとりくむ。

大阪市は「実質給付」としてきた奨学金について、議会の議決を経ずに内部処理で「返還免除」をおこなってきた。このずさんな債権処理を監査委員から厳しく指摘されたことを受けて2010年に新たな条例を制定。法が終了した2002年の法終了時点で返還期間に入っていた1356人については「返還免除」、奨学金を受給中であった186人には「返還を求める」という異なる対応を一方的に決定した。

この理不尽な決定に抗議し支払いを拒否した当時の奨学生に対して、大阪市が裁判に訴えるという暴挙に出たのが裁判のはじまりだった。

府連は奨学生を支えるために奨学金闘争本部を設置。奨学生らも「不当な返還決定を撤回させる会」を結成し、弁護団とともに裁判闘争を展開した。

不当判決に抗議し大阪市役所前で行動(2017.5.26)

しかし2017年5月、大阪地裁は大阪市の主張を全面的に認めて奨学生に総額2362万円と遅延損害金の支払いを命じる不当判決を言い渡した。

判決では当時の市職員が返還免除と説明していた可能性を認めながら「職員は大阪市を代表するものではない」、さらに「被告(奨学生)は『有為な人材』になれば返還免除さえると認識していた可能性が高い」と認めながら「取扱要領による免除は無効」として返還を求めた。

奨学生はこの不当判決に怒りを持って控訴。大阪高裁で2回公判がおこなわれたが、2回公判のあと裁判長が①大阪市の行為は許されるものではない。事実関係は被告(奨学生)が言うとおり②しかし議会で条例制定されており1審判決をくつがえすことはできない③大阪市の返還決定はまちがいという決定を許すとすでに返還している人との公平性に問題がでるとの説明で和解を提案。

裁判所、双方の弁護団で和解協議が積み重ねられ3月20日に合意。和解条項では、議会にかけなかった大阪市の失態によって返還を求めることになったことについて「遺憾の意」との言葉で謝罪を明言。①遅延損害金は元金の支払いに応じることで免除②元金の一定年数分を一括返還すれば延納利息をつけない③国基準免除は2018年9月30日以降未到達分に適用などの内容となった。

奨学生は最高裁まで闘う決意を示したが、判決が覆える可能性は低く、遅延損害金の厳しいリスクや大阪市の謝罪が明記されたことをふまえて苦渋の決断として和解を承諾した。

奨学生のなかには公判中に結婚した人、子どもが生まれた人、奨学金を受給していたことをつれあいに伝えていない人もおり、突然の返還は生活設計を一変させ、生活破たんを招く恐れもある。府連は奨学生を支えるために広くカンパを募って基金を設立し、裁判によって発生した一括返還分について基金で支援していくことを決めた。

府連は厳しい裁判を闘った奨学生に応えるために多く人にカンパに協力してくれるよう呼びかけている。