行政データを活用した実態把握でわかったこと

水平時評 府連書記長 赤井隆史

『人権問題に関する市民意識調査』結果に見られる課題やインターネット上の人権侵害事象など同和問題における現代的な課題の解決に向けて幅広く意見を求めるため、という目的で「大阪市同和問題に関する有識者会議」が設置されている。

今回はその第2回目の会議資料として提出された「行政データを活用した同和地区の実態把握」について、紹介したい。比較対象となっている前回のデータが2000年(平成12年)調査であり、今回のデータは2011年(平成23年)調査である。

まずは、15歳未満の人口の割合についてである。

全体の傾向としては、15歳未満の人口が減り、65歳以上の高齢者は増加の傾向にある。2000年調査では、市内同和地区12地域の15歳未満の対象者数は、4.930人を数えていたが、今回の調査(2011年調査)では、2.645人となっている。大阪市内全体の下げ幅よりも、同和地区の減少の幅が大きいという結果だ。

また、65歳以上の人口割合は、2000年調査が6.299人に対して、2011年調査は、7.961人と増えている。ここでは逆に大阪市全体の増加率より同和地区の増加率が高く、少子高齢化の傾向が著しく同和地区に現れていることがわかる。

世帯構成では高齢者世帯及び高齢単身者世帯の割合が高い。世帯総数16.898世帯に対して、高齢者世帯6.122世帯(うち単身者世帯3.436世帯)、母子世帯が293世帯、父子世帯が21世帯となっている。

生活保護世帯の数字は驚きである。

2000年調査では、3.433世帯だった生活保護世帯が、今回の調査(2011年)では、4.165世帯となっており、同和地区の4世帯に1世帯、24.65%という高い数字となっており、大阪市平均の8.67%の生活保護率から見ると実に3倍近い数字を示していることになる。

こうした単純集計結果から想定されることは、第1には、部落に生まれ育って結婚した人たちが部落を離れ、代わって社会的困難を抱えた人たち(高齢者が多い)が被差別部落に来住してきているということ。

第2は、かつて子育てがしやすい環境といわれていたはずの部落において、子どもの数が減ってきているということ。これは、最近の保育所の廃止や統合が影響しており、加えて子育ての環境が各部落において弱ってきていることへの警鐘といえるだろう

第3には、来住世帯の多くが、生活保護率を高め、高齢化率を高める要因となっていることである。この10年の間に大阪市内の被差別部落に集まってきている世帯の多くが、社会的困難を抱えた人たちであるということ。

第4は、33年間の同和行政によって一定高められた生活基盤が、この10年の間に再び崩れてきており、深刻な生活苦と社会的排除が各部落を覆い尽くすように深刻な実態として浮き彫りになってきているという点である。

単純集計とはいえ、深刻な一面が明らかにされたことは事実である。なぜ、被差別部落には社会的弱者が吸い寄せられるように集まってくるのか。被差別部落が常に社会的困難者が通り抜けるべき、日本社会において必要不可欠な街として、存在し続けなければならないのか。

日本社会には、困難を抱えた人たちを吸収する役割を持った存在が必要であり、その役割を被差別部落が担っているのだろうか。

被差別部落住民や被差別部落出身者という“ひと”を対象とした部落差別と、“まち”を範囲とした部落差別とをわけて考えていかなければならない時期を迎えているのではないだろうか。