参議院の存在意義を問う選挙に

水平時評 府連書記長 赤井隆史
第23回参議院選挙がスタートした。7月21日の投票日まで全国で熱戦が繰り広げられる。

今回の参議院選挙の争点は、衆議院と参議院の“ねじれ”が解消されるか、どうかが争点のようにマスコミ各社が取り上げている。果たしてそうだろうか。

わが解放同盟が推薦を決定し、勝利に向けて奮闘している大阪選挙区の梅村さとし候補が6日土曜日、大阪3区西成区の個人演説会に参加され、次の点を強調された。
「わたしは、民主党から立候補している人間でありながらこんなことを言うことは間違っているかもしれませんが・・・」と前置きされ、「参議院議員というのは、本来党に属するべきではないと思っています。党の判断や指示ではなく、個人の経験と見識で賛成、反対を決めるべきだと思っています。」と発言された。
わたしは、なるほど!っと思った。

各党の思惑ばかりが優先される参議院選挙で、自民党に勢いがあるとか、民主党が劣勢だとかに一喜一憂しているのが現状だ。しかし、本来の参議院の役割とは、国民の生活に影響する法律や予算など大切な事柄を決めるのに、一つの場所(院)で話し合うより、同じテーマをもう一度別の場(院)で別の人たちがもう一度話し合って慎重に決めること。それが二院制のそもそもの役割であり、ねらいであるはずだ。つまりは、行政の監督や法律案をダブルでチェックするということであり、二つの院があることにより国民の多様な意見と利益をできるだけ広く反映することが本旨のはずである。

もともと衆議院と参議院の関係でいうと、参議院は「良識の府」「再考の府」と呼ばれ、衆議院の決めたことに行きすぎがないかチェックしたり、衆議院の足らない点を補うことが求められている。さらに参議院議員を2グループにわけ、任期を3年ずらしていることにより、当然、選挙も3年ずれることとなる。こうすることによって、すべての参議院議員が「今年は選挙だ」ということで浮ついてしまうようなことがなくなり、より「慎重な議論」が実現することとなっているのである。

こうした冷静な議論がかき消されているのが今回の参議院選挙だ。国会運営がスムーズに進まない、「だからねじれを解消させてくれ」と叫ぶ自民党と公明党。「多数が何もかも決めてしまって良いのか」、と抵抗する野党。果たしてそれで良いのだろうか。梅村候補の言うように、参議院議員は党に属さず、衆議院から送られてくる法案を真摯に謙虚にまじめな経験と見識で判断し、党の考え方に振り回されずに判断するというスタイルに改革・改編するという必要性が日増しに高まってきているのではないだろうか。

政党の駆け引きや党の利益だけが前面に出されて議論される国会運営そのものにへきへきとしている有権者たちが、かつてないほどの政治への閉塞感を高めているのではないだろうか。政治に無関心が広がっており、自分の一票では変わらないと選挙から逃避してしまう人も少なくない。また、テレビや新聞での国会論戦や各党の政策だけが繰り返し流されることに嫌気をさしている人も多いことだろう。

今回の最大の争点は、「参議院議員の役割を問う」ということだ。衆議院とは全く違う議論のスタイルやそれこそ党ではなく、地域による代表に選考方法を変えるとか、医療、福祉、人権、環境、教育などの分野別候補の擁立とか、政治が変わるとは、システムを変えることであるはずだ。そのきっかけを少しでも醸し出すことが、今回の選挙戦に求められている課題だと思う。

各候補は、自分が属する党の政策を訴えることに必死になっている。それが、自分への支援に結びついていると信じているからだ。しかし、選挙に立候補しているのは個人である。個人がどんな政治をどんな政策を訴えるかは、それこそ参議院議員候補としての資質と見識が問われているのだ。梅村候補に期待する。党のマニフェストではない。梅村候補個人の政策と参議院改革という本丸を最後まで訴えきることだ。

だからこそ梅村候補を心から応援しようという力が湧き出てくるものである。選挙戦は大激戦だ。最後に頭一つリードするためにも個人・梅村の政策と人となりを訴え続けることしかない。僅差の闘いに勝利する鍵はそこしかない。

わたしたちは、当選後の梅村候補が手をつけようとする“参議院改革”に期待したい。だから、梅村候補を最後まで勝利させるために全力をあげる。部落解放運動に取り組むすべての心ある人たちに呼びかける。