差出人のない手紙に書かれていたこと

差出人のない手紙が府連の住所宛てで、筆者に送られてきた。

最近、「部落民○○○○」との宛名で、狭山事件の石川さんや被差別部落に対する差別的な内容の差別ハガキが解放同盟関係者に次々に送られてきていることから、またその手紙かと思い、恐る恐る封を切るとまったく違う内容の手紙であった。

手紙の中身は、大阪市長である橋下市長への抗議を訴える内容で、一連の週刊誌報道による橋下市長の出自問題の記事への疑問が書かれていた。

 

内容は、「同和地区出身として生い立ちを載せた週刊新潮等も、~中略~ 私は前から気になっているのですが、選挙前というのがあまりにもタイミングが良く、~中略~ かえって同情票が流れたように思います」

「あの方の性格ならとことん追い込むと思うのですが、選挙が終わったらもう何も言われません」

「橋下市長が差別を助長する記事を書いた人をとことん問い詰めてもらえると思っていたのですが、選挙が終わったら何もなかったようですし、あの人の性格からしたら絶対にオカシイです」と結ばれていた。

 

手紙が、府連に送られてきた日、わたしは東京にいた。『週刊朝日』を出版している朝日新聞出版社と部落解放同盟中央本部による確認会に参加していたからだ。

 

『週刊朝日』による橋下市長への差別記事が掲載されたのが、昨年の10月26日号だ。当時、毎日のように橋下市長と朝日新聞や朝日放送とのバトルがテレビや新聞で取り上げられ、注目を浴びた。

作家の宮崎学さんが「闘うひとり解放同盟だ」と評したとおり、橋下市長は「僕の人格を否定する根拠として、先祖や縁戚、DNAを挙げて過去を暴き出していくのは公人としても認められない」と厳しい批判を展開し、結果として、朝日新聞出版は、連載の中止を決定。翌週10月23日発売の誌上 (11月2日号)で、「同和地区に関する不適切な記述が複数あり、このまま連載の継続はできないとの最終判断に至りました」との「おわび」を河畠大四編集長名で掲載している。

一連のバトルはこれで幕引きしたかのようにマスコミ業界では伝わっているようだ。

 

差別や人権問題が一種の対立として取り上げられることを否定するつもりはないが、一過性のブームのように扱われることに違和感を感じる。

府連に送られてきた手紙には、抗議の異を唱えた橋下市長に期待を寄せたにも関わらず、あっけない幕引きに落胆したと書かれている。

 

問題が発生すれば、スピーディな対応が要求されるし、手をこまねいていては遅きに失することもあるだろう。しかし、差別事件や人権侵害等については、その事件の持つ背景や問題点などをていねいに掘り下げるべきであり、処分や謝罪だけを先行することに,筆者も強い違和感を覚える。

 

『週刊朝日』の差別記事は、売らんがため、そして一人の政治家を批判するために、出自を暴き「本性」が部落出身だからと批判した。それが部落差別であることに、著者も出版社も、驚くほどに無自覚であったことが問われている。時間をかけてもそこのところが共通認識できるよう紐解いていくことに意味がある。差別や人権の問題がブームに流されることがあってはならない(A)。