Vol.234 はじまっている「地域共生社会」への実践 大阪府水平社100年記念シンポから

 

2022年8月6日、大阪府水平社創立100周年記念集会が開催された。
第7波のコロナ禍が猛威を振るう中、レセプションは中止せざるを得なかったが、記念集会は何とか成功裏に終えることができた。
関係各位に感謝申し上げるとともにコロナ禍の中にあっても参加してもらった来賓をはじめ各支部関係者にあらためて集会が盛大に開催されたことを喜び合いたいと思う。

第2部として「第4期の部落解放運動を創造する」と題して地域共生社会を作る地域からの発信というサブタイトルで、シンポジウムが開催された。時間が押していたこともあって、十分な討議とはならなかったが、幾つかのポイントは参加者で共有できたのではないだろうかと思っている。

そのポイントとしては、地域に基盤をおいた部落解放運動は、“誰でもどこから”でもスタートできる活動だと言うことの確認である。パネラーのひとりである表西弘子さんは、日之出支部の役員としての活動を一旦は終え、これからは、旅行したり、少しゆっくりと人生を謳歌しようという思いはあったようだが、結局の所、身体を動かさずにはいられない性分もあって、子ども食堂の中でもめずらしい朝ごはんを子どもたちに提供するという活動にチャレンジしようと思い立ち、活動を開始。
部落の中ではなく子どもたちがやって来る学校の一室を借りて朝ごはん食堂をオープンさせるというなんとも表西さんらしい発想で、スタートさせ、いまでは表西さん曰く“市民権を得た”と胸を張る。

ひとり部落解放運動とも呼ぶべき抜群の行動力を発揮したといえる。それこそ、“誰でもどこから”でも開始することができる部落解放運動だ。
そういえば水平社発足後、西浜には6つの水平社が存在している。そして水平社の大会は、本部が方針を提案するのではなく、各地の水平社が方針を提案し、本部に採択を求めるという現在の大会とは真逆とも言える方法を取り入れている。

つまり、地域での活動を活発化させるために本部に何を求めるのかという要求や要望を提案するというそれこそボトムアップ型の部落解放運動が100年前に先輩達が取り入れて実施してきたというのである。

毎年開催される大会という形式が、形骸化してきている今日この頃である。ここは思い切って、従来の大阪府連が運動方針を提案する大会の年と地域から要望要求を大阪府連に提案するという地域からの方針提案という府連大会と交互に開催するという企画を練っても面白いのではないだろうか。

まさに第4期部落解放運動の方向が、地域共生という地域にこだわればこだわるほど、地域の声を府連や中央本部に届けるという運動の建て付けに改革すべき時代を迎えているのではないだろうか。

水平社の時代をよく“点の運動”と表現され、戦後に向けて“点から線へ”と部落解放運動が大きく広がっていったと説明している。つまり活動家中心の少数の運動から大衆的な組織へと変化していったとの意味合いで使われていたようであり、名実ともに部落大衆を組織した解放同盟への発展を意味していた例えである。

しかし、表西さんの活動スタイルは、ひとり解放同盟ともいえる点の活動であり、拠点も部落ではなく、地域の子どもたちが通う学校であり、子ども食堂を支えるスタッフの多くも地域外のひとたちが多数を占めるという状況にある。つまり、これからの解放運動のヒントは、点から線ではなく、無数の点を張り巡らすようなそれこそ空を覆うほどの星降る夜に染め上げることができるかどうかがポイントのようである。

シンポジウムに参加してもらった和泉の大規模なまちづくり運動も隣保館を拠点とした住吉による地域共生の活動も第4期にふさわしい共生社会実現のために奮闘する部落解放運動の実践であることに変わりはない。こうした共生社会実現のために実践する地域運動を横糸とし、ひとりひとりの活動家による点を張り巡らす運動を縦糸として交わらすことができれば、大阪における一大人権運動が面として広がりを持つものになるのではないだろうか。

18団体による社会福祉法人「つばめ会」が組織されているように、部落発の子ども食堂というそれぞれの点が、ネットワークされ国や大阪府に対する政策提言をまとめるという試みは出来ないのであろうか。また、平野でスタートしている地域の“ムラ風呂”(府内すべてで幾つあるのか?)の経営や実践を交流するようなネットワークが構築できないものか。それぞれ部落解放運動に取り組む多くの活動家による点の活動を星降る夜のように空一面に張り巡らしてみたいものだ。

101年目のスタートが切られたようである。