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「GAFA(ガーファ)」とは、アメリカのIT(情報技術)企業大手4社の頭文字をとって名付けられた造語だ。グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、そして、アマゾン(Amazon)である。
そのフェイスブックが最近社名を「メタ(Meta)」へと変更したらしい。
“メタ”とは、超越するという意味を持つらしく、バーチャルリアリティ(仮想現実)をVRと言われるヘッドセットをかぶりバーチャルな3D空間に構築された仮想空間で現実離れした体験ができるという世界である。遠く離れている友人と仮想空間内で待ち合わせ、一瞬で海外へ旅立ち観光を楽しんだり、ライブに参加してバーチャル上では密でも実際はお互いに自宅にいるから安全な状態で盛り上がれるという代物である。
仮想空間内で操作者本人の紐付けとなるキャラクター=アバターをつくりだし、髪型や服装、装飾品などを自分自身で選んでオリジナルの風貌にカスタマイズするというのである。つまりは、仮想空間に自分の分身を映し出し、さまざまなスポーツや遊びに挑戦しようという世界である。
こうしたインターネットを使ってコミュニケーションできる仮想現実をメタバースと呼んでおり、いよいよフェイスブックが社名を変更してまで、仮想現実の世界を独占しようという意欲がありありとあふれ出しているのが、IT産業の現状だ。
自分自身の分身“アバター”が、友だちとの交流やスポーツをいそしむ程度のバーチャルリアリティなら罪もないが、これが仮想空間でのビジネスや政治、経済にまで発展すれば、話しは別だ。最近では、仮想通貨ビットコインからはじまり、現在はNFTというデジタル資産まで登場し、ゲーム内のアイテムやSNSのアイコン、絵画、音楽などさまざまなデジタルアートでNFTが使われている。NFTの売買は既に世界中で行われており、2021年の8月の流通総額が3500億円を超えたと報道されているほどである。さらには、仮想空間でのイラストが1億円以上で取引されることもあるらしい。
人間とは、現実空間で贅沢放題をやり尽くし、それだけでは飽き足らず仮想空間にまで浸食しようというのか。人間の飽くなき利潤追求は、施しようのないところにまで突き進んでしまったのか。人類は“パンドラの箱”を開けてしまったのか。メタバースでアバターに履かすナイキのシューズが日本円で120万円の価格がついたらしい。この仮想空間での知的財産はどうなるのか?。コピーや盗難等の不正行為や、破壊行為があった場合、誰が取り締まるのだろうか?。個人の名誉や人権侵害が発生すれば、誰が判断し、名誉回復と加害者への規制や罰則は、「メタ」という会社が担保してくれるのだろうか。
これらに関する制度を確立するのは容易なことではなく、混乱が生じる可能性はきわめて高いと言わざるを得ないだろう。
現実空間の部落解放運動は、「部落出身であることを明かした途端、結婚が破談となった」といったケースや「被差別部落に居住しているとわかった段階で面接すら排除された」といった差別が発生し、その事実を糾弾することで、差別が社会悪であることを内外に明らかにしてきた歴史をたどってきている。つまりは、差別や人権侵害が起こることで、その課題を社会変革につなげていくという、いわば「事後規制による人権運動」という側面が強かったと言えるだろう。
しかし、仮想空間の世界では、事前に社会のルールとして、「事前規制による人権運動」の展開が必要であることは誰の目から見ても明らかである。ルール無用の仮想空間の世界は、差別や人権侵害を闊歩させてしまうような社会にしてしまうのか。それとも国際的な人権のグローバル・スタンダードをつくりあげ、バーチャルの世界における国際人権ネットワーク委員会(仮称)的な人権救済機関の設立や確信的な差別煽動者や団体に対するネット社会からの追放といった措置に踏み切るような人権のシステムが確立されるのか。今後の部落解放運動にとっても重要な課題であることは言うまでもない。
これまでのような部落差別が発生したという事実に基づく運動という範囲から、差別や人権侵害を事前に起こさないように、また発生してもすぐに対応・解決できるような社会のルールやシステムの確立、さらには法律を求めていくような運動の展開が必要になってきている。
時代に取り残されないようにしなければならないが、バーチャルリアリティ(仮想現実)という世界に人類が足を踏み入れたことは事実である。この世界に国際的な人権のグローバル・スタンダードを打ち立てることが出来るかどうか部落解放運動の分水嶺でもある。