Vol.188 住民投票・衆院選…ポストコロナ時代見すえた選択を

大阪市廃止の是非を問う住民投票の「第2ラウンド」は11月1日の投票日と決定した。

大阪府議会に続き9月3日、大阪市議会も賛成多数で可決、住民投票が決定した。賛成が過半数を上回れば、明治22年(1889年)の市制施行以来、親しまれた「大阪市」の名称が消えることとなる。政令指定都市の大阪市24区を解体して4つの特別区に分け、日本の副首都としての役割を担う標ぼうする「都構想」を問う住民投票である。

おりしも9月1日の新聞各紙に「衆院選 自民・市議ら3人擁立」「公明現職区に出馬検討」という見出しが躍った。つまり、11月1日の住民投票と衆議院が解散され総選挙が同日になった場合、公明党が議席を持つ大阪3区・5区・16区で自民党の市議ら3人が出馬を検討していると報じられたのだ。

大阪3区には昨年4月の大阪市長選で松井氏に敗れた柳本顕・元自民大阪市議。5区には自民大阪市議の北野妙子幹事長、16区には昨年6月の堺市長選で敗北した野村友昭・元堺市議がそれぞれ無所属で立候補を検討していると報じている。

柳本氏は取材に対し、「ずっと都構想に反対してきたので、賛成に回った公明党の候補を応援するのは矛盾が生じる。自公政権を支持するが、都構想に反対する受け皿は必要だ」と出馬の可能性を認めたような内容が掲載された。

一方、国会では自民党の総裁選が闘われている。告示の前から派閥からの支持等も含め菅官房長官が圧勝するような報道内容が繰り返され、勝負の前から勝者が決まっているような状況だ。菅自民党総裁の誕生は、イコール菅首相という結果となり、新しい菅内閣総理大臣が誕生することとなる。菅さんと言えば、大阪維新の松井氏とは蜜月の関係だと噂されており、コロナ関連の交付税においても大阪へは特段の配慮がなされたような報道さえ見え隠れしている。

中央政界では自公連立政権が引き継がれ、一方大阪では、維新と公明との連携による都構想賛成派の陣営が整い、かたや自民党大阪府連は、都構想反対を掲げ、維新・公明への対決姿勢を強めている。何とも奇妙な構図が、中央政界と大阪の政治状況との乖離として生じている。

「都構想」を巡る場外乱闘としては、興味深い展開ではあるが、大阪府連としては何とも難しい舵取りとなってきている。
 国政では同時に新・立憲民主党の合流新党も立ち上がった。大阪においても現職国会議員はもとより、新人の擁立も噂されており、自民党に対抗する野党政党として多くの新人候補が擁立されることとなるのだろう。しかし、吉村大阪府知事のコロナ対応での知名度・人気アップという現実から考えても大阪維新の勢いは強く、自民候補でさえ戦々恐々という状況から合流新党候補は厳しい闘いを余儀なくされることに違いない。

連合大阪や自治労といった苦労を共にしてきた連携する団体との調整は不可避であり、政治・選挙へのスタンスがいまほど問われるべき時期はないが、流動化している現実にどう対応するかが、わが大阪府連にとっても難しい選択が迫られている。

当然、都構想やコロナ禍での対応においても“現状維持派”を標榜するつもりなど微塵もない。新しい生活様式と言われるニューノーマル時代への対応、都構想への反対という狼煙(のろし)だけではない

明日の大阪の青写真を、2023年の知事・大阪市長・堺市長選・統一自治体選挙という一大決戦を目途にまとめ上げる必要が迫られている。

中央政界は、7年8ヵ月続いた安倍一強政権が終焉を迎える。それまで1年でコロコロ変わる首相ではなく、国民は安定を求めた。しかし、安定が招いた代償は、モリカケ問題であり、公文書の改ざんであり、桜を見る会だ。やはり政治には、いつも“改革”という変化を求める声に答えを出し続けることが重要なようだ。市民の持つ改革志向に打てば響く政策が提案できるかどうかが鍵を握っていることになる。

10月25日、もしくは11月1日の衆議院と住民投票のダブル選挙となるのか、単独住民投票になるのか、答えが出るのははもうすぐだ。ともあれポストコロナの時代への選択であることは間違いのない事実。分断・孤立・排斥といったコロナ禍の社会において進行したと言われる悪影響に対して、大転換をめざす政治の改革志向を打ち出すチャンスでもあることを肝に銘じたい。