Vol.184 コロナ禍で浮かび上がる富の再分配の必要性

「子どもたちと宝物を空けるような気持ちで開き、みんなであれやこれや喜びながら品物を出しました。届けて頂いた食べ物すべて大満足です。とにかくその対応の早さに驚き、感謝の言葉しかありません。ありがとうございました。久しぶりに家に明るい話題が舞い込みました。」

「バス会社に勤務していた夫は、急に仕事を喪うことになってしまい・・・そんな私の事情を知った友人がフードバンクを教えてくれました。送ってもらった食料を前に、ちょっと元気になりました。」

「学校から帰り、箱を開けた子どもたちの笑顔と歓声が忘れられません。さまざまな方からのご好意である事を伝えました。『有り難いね。この気持ち忘れないでね。将来、ひとの役に立つひとになろうね。』と、話しました。」

ふーどばんくOSAKAで実施した「コロナに負けるな!食の緊急支援」と銘打った企画で、総数150世帯に食糧支援にとりくんだ。そのお礼のコメントを紹介した。

150世帯への緊急支援は、同時にアンケートへの協力もお願いした。

「食品のお届けを受けて、ご自身や家族に当てはまること(複数回答有)」との問いかけに、「気持ちに余裕が出来た」-17%、「届くの楽しみにしていた」-19%、「家計が少し楽になった」-18%との回答が寄せられた。

また、「これからの生活で、あなたが必要とする支援や制度を教えてください。」との問いかけに対しては、「現金給付だけではなく、光熱費や基本料金の減免を希望」、「子どもを安全に数時間だけでも預かってくれる場所がほしい」といった意見や、「とりあえずここに連絡したらいろいろ教えてくれるという場所があればうれしいです」と言った意見もあった。

同時に「困ったとき相談できる人はいますか」との問いかけに、「いない」と答えた世帯が、30.3%もいたと回答している。

利用された世帯には、ひとり親家庭が多く、子育て真っ只中の家族が多いこともアンケートに反映されていることはもちろんではあるが、仕事を探しているが、適当な仕事が見つからないと言った感想やコロナ禍で突然の雇い止めや仕事がなくなったというケースが紹介されている。

とくにシングルマザーの世帯の困窮度は高く、家賃と光熱費、さらには携帯電話代金をなんとか確保しているかわりに、自分は食べなくても大丈夫と食べることをあきらめていたという心痛なる感想も寄せられている。

「コロナ影響の前から、少し生活は困窮していた」-8%、「収入が減収」-19%、「出勤日数が減った。または職場が休業状態」-11%、「失業」-6%という数字となっている。

まさに、コロナという“天災”が、間違いなく“人災”として生活困窮者に降りかかってきているという現実がここには存在している。

全世界で猛威を振るうコロナウイルスではあるが、欧州では、単純に以前の経済生活に早く戻そうというだけではなく、これを機会にむしろこれまでの暮らしぶりを見直し、新しい社会のあり様に向かって踏み出そうというきっかけにしようという動きが進みつつあると言われている。

「グローバル化」を無条件にいいことだと受け入れ続けた事を反省し、ヒトもモノもカネも情報も、こんなにも大量かつ高速に国境を超えて移動させることが本当に必要だったのかどうか、といったことをあらためて考えるきっかけにしようという試みだ。

今年の1月国際NGOオックスファム・インターナショナルは、世界のビリオネア(10億ドル以上日本円1150億円の資産を持つ人)の数が過去10年間で倍増し、最富裕層2153人は最貧困層46億人よりも多くの財産を保有していると発表している。46億人は世界人口の60%に相当するという人口だ。

世界のたった2000人程度のひとたちが、世界人口の6割の富と同等だとする数字は、貧富の格差というレベルでは説明できないほどの乖離した数字である。コロナ禍転じて福となす為には、「上位1%の人々」が莫大な富を持ち続けるという社会を転換させ、富の再分配を世界規模で行う仕組みが不可欠のようだ。世界が遠いなら自分たちから富の再分配を仕掛けていく知恵と政策が必要のようだ。