Vol.120 ダイエー・Bサポ・ふーどばんく 「職」と「食」をつなぐ「三方良し」の試み

労働分野における就労支援にとりくんでいる法人、通称Bサポート(一般社団法人ヒューマンワークアソシエーション・以下Bサポという)の設立から5年が経過した。地域に対して総合的な就労支援システムづくりを提案することにより、今まで暮らしてきた地域で安心して働き、地域に貢献できる人材を育成することを目的としている。

常に相手の立場に立ち、求職者の能力を引き出すことにより、本人主体の職業選択や生活基盤の向上をめざす支援を行う。と同時に、地域(企業、NPO、法人、町会等)におけるニーズを積極的に把握することにより、求職者と地域のかけ橋をめざすということをコンセプトに就労支援にとりくむ法人である。

いわば、地域の活性化を通して事業を興し、その事業を通じて就職困難層の就労を支援に役立てていこうというものであり、パッケージで地域の社会的起業のきっかけづくりとその事業を通じた雇用機会の発掘というハイブリッド型の市民運動の仕掛け人、といったらすこし褒め過ぎかもしれないが…。

ふーどばんくOSAKAに(株)ダイエーさんから販売許容日が越えた食品についての寄付の申し出があり、この間ふーどばんくOSAKAと(株)ダイエーによる話し合いが持たれてきた。

この販売許容日とは、食品流通業界での3分の1ルールと言われているものであり、いわば商慣習で、食品の製造日から賞味期限までを3分割し、「納入期限は、製造日から3分の1の時点まで」「販売期限は、賞味期限の3分の2の時点まで」を限度としている慣習のことである。 例を挙げれば賞味期限が6カ月である場合、2カ月以内の納品、4カ月以内の販売が暗黙の了解として求められるというものである。つまり、3分の1を切った食品について、フードバンクに寄贈しようというダイエー側の食品ロス削減のとりくみの一環による事業展開である。

ふーどばんくOSAKAにとっては願ったりかなったりの寄付であり、快く引き受けることとしている。問題は、この販売許容日のチェック。いわゆる日付の確認などの仕分け作業が膨大であるという点にある。ダイエーほどの大型の都市型スーパーで扱う食品数は質量ともに膨大であることは言うまでもなく、それを決められた日時までに日付チェック・仕分けとなれば気の遠くなる作業である。

これに目をつけたのが、Bサポだ。食品の販売許容日チェックという業務そのものをBサポが業務委託を受けるというのだ。つまりは、日付チェック・仕分け作業をBサポが請け負うというものだ。この作業を具体的には、就労訓練事業として位置づけ、就労困難な生活困窮者に対して、支援付きの就労(雇用契約に基づく労働及び一般就労に向けた就労体験等の訓練を総称するもの)の機会の提供等を行う事業として発展させようという試みである。実に痛快な事業である。

ダイエーさんにとっても「食品ロス削減」という環境面における社会貢献事業という事業効果をもたらすことはもちろん、それだけにとどまらず「働き方の多様性理解」という時間や環境にとらわれない新たな働き方の提案であり、中間的就労という場の確保にまでつながる画期的な事業提案ではないだろうか。また、こうした事業の展開は、昨今のダイバーシティ化にともない、生活困窮者だけにとどまらず障がい者、シニア、シングルマザーなどへの就労機会の提供にも通ずる事業効果が期待されることは言うまでもない。

当然、Bサポにとっても就労支援の対象者の事業確保に成果を上げることはもとより、業務遂行による法人のイメージアップはそれこそ計り知れない貢献度をもたらすこととなるだろう。ふーどばんくOSAKAにおいてもメジャー企業であるダイエーさんからの寄付という行為は、認定NPO法人としてのさらなる活動のひろがりにつながるものであり、同時に食品ロスという大問題への関心を高める絶好の機会でもある。

ダイエー自らが決定した“食品ロス削減”のため販売許容日をこえようとしている食品をふーどばんくOSAKAに寄贈しようという試みが、一方では、就労困難な生活困窮者に対する就労支援策へと事業展開されて行き、もう一方では、施設や子ども食堂などの食糧支援につながっていくという、いわゆるトライアングルの関係とも言うべきダイエー・Bサポ・ふーどばんくOSAKAによる「寄贈側よし」「受け手側よし」「仕事探し側よし」という、いわば“三方良し”というそれぞれ三者による事業遂行が大きな社会貢献事業として効果を上げることを期待したいと思う今日この頃である。