ヘイトスピーチ対処条例に反する大阪市の貸し館許可

水平時評 府連書記長 赤井隆史

大阪市が、全国に先駆けて成立させた「ヘイトスピーチの対処に関する条例」制定の意義については、水平時評コラム2016年1月18日で紹介させてもらっている。
この大阪市において成立した「条例」をあざ笑うかのように、その大阪市を狙い打ちし水平社博物館の差別街宣行為を行った川東氏が、あろうことか「市民交流センターひらの」に貸し館を申し込む暴挙にでてきている。

この行動は、ヘイトスピーチを許さない市民と部落解放同盟に対するあからさまな挑戦ともいえるもので、本会議における条例成立時の審議が行われている本会議場に、銀行やコンビニエンスストアなどで防犯用に使われるカラーボールが投げ込まれるという事件と同様、悪質な挑発行為であり、われわれに対する敵対行為そのものとして、貸し館を許可した大阪市に対して、断固とした抗議を実施している。

地元、部落解放同盟平野支部はじめ大阪市内12支部はもとより、連携団体等とも連絡をとる中で、弁護団との検討も進め、ヘイトスピーチを許さない条例を成立させた大阪市だからこそ「自治体は差別行為に関与しない義務を負っている」ことから「公共施設が人種差別に利用されると判断される場合には拒否できる」との立場を取るべきではないか、という点を強調しながら大阪市に何度も訴えてきたわけである。

しかし、大阪市の態度は、「集会の目的を事前に詳しく聞くわけではない。正当な理由がない限り利用を阻むことはできず、不当な差別的取り扱いをしてはならないとされている」との対応から、貸し館を拒否することは現段階では難しいとしており、公共施設が利用される事態を防ぐことが出来ない現状にある。

条例制定のきっかけとなった「ヘイトスピーチに対する大阪市としてとるべき方策について」の答申では、施設等の利用制限について、以下のように指摘されている。

ヘイトスピーチを行う団体であること、又は、ヘイトスピーチが行われることのみを理由に公の施設の利用を制限することは困難である。ただし、ヘイトスピーチが行われる蓋然性が高く、かつ、管理上支障が生じる等、現行条例の利用制限事由に該当することが客観的な事実により具体的に明らかに予見される場合は利用を制限することもあり得る

いわば、「管理上支障が生ずる」「混乱を防止できない」といった客観的かつ具体的な予測がなされることが大前提であり、ヘイトスピーチが行われることが想定されることだけを持って、公の施設の利用を拒否することは困難であると解釈付けているのである。

しかし、ヘイトスピーチは個人の尊厳を否定しており、人権擁護の歴史に反する行為であることは明々白々であり、表現の自由を理由に許される行為ではないはずである。

ヘイトスピーチへの対処に関する大阪の条例第一条では、「ヘイトスピーチが個人の尊厳を害し差別の意識を生じさせるおそれがあることに鑑み、ヘイトスピーチに対処するため本市がとる措置等に関し必要な事項を定めることにより、・・・」と明記されている点からも、ヘイトスピーチが行われる蓋然性がきわめて高いことや、かつカウンターなどの行動により、管理上支障が生じる客観的可能性などから予見すれば、当然簡単に貸し館にGOサインを出すことが、全国初の条例を制定した自治体の大阪市として、取るべき行為であったのかどうか、再考すべきではないだろうか。

条例施行が今夏からと報道されてはいるが、施行されてもなお、特定の人種や民族に対するヘイトスピーチの集会に公共施設を利用するという事態だけは避けるような規定を設けるなど、条例の不備が相手側から悪用されないよう最善の努力を大阪市には望みたい。