ただひたすら名前だけが、13日間、新聞紙面の4ページを使って、合計で52ページに
コラム | 2025年6月23日
コラム | 2025年6月23日
ただひたすら名前だけが、13日間、新聞紙面の4ページを使って、合計で52ページにわたって掲載された。その新聞は「沖縄タイムス」だ。戦後80年、沖縄戦で亡くなられた24万人以上のひとの名前が一斉に掲載されたのである。
「刻まれているのは、戦禍が奪い去った24万2567もの命。死の瞬間を知る人さえなく、遺骨になっても帰れなかった幾多の生きた証し」
そんな言葉で始まったのが、6月10日付朝刊の沖縄タイムス13面のメッセージである。こんな言葉が続く。「誰もが、誰かの子であり、親だった。きょうだいと笑い合い、祖父母と語らう日常があった」「その名を呼び、手に触れなでて、誓いを立てよう。新たな戦争遺族に、私たちはならない」
そこから13日間。1日4ページ、びっしりと名前だけが連なるページ続く。終了したのが、13日目の6月22日。最後の掲載となったすべての52ページをつなぎ合わせると、なんと紙面の背景に「平和の礎(いしじ)」と「月桃(げっとう)の花」の写真が浮かび上がるというイキな演出にまでこだわった企画である。
沖縄で「月桃(げっとう)」は、ショウガ科の植物で「サンニン」とも呼ばれるらしい。美しい花を咲かせ、平和の象徴とも言われている花である。
「平和の礎(いしじ)」は、沖縄県南部の糸満市摩文仁の平和祈念公園内に、沖縄戦などで命を落とした戦没者の名前が刻まれている。何年か前の大阪府連の親睦旅行で訪れた地でもある。
「平和の礎」と書いて「へいわのいしじ」と読む。 この名前は、建物の基礎「礎(いしずえ)」を、沖縄の方言で「礎(いしじ)」ということに由来しているらしく、ゆるぎない平和への想いを込めて名付けられたと言われている。
あらためて戦後80年である。広島、長崎原爆投下からも80年。沖縄地上戦からも80年である。 ある意味平和ボケかぁ・・・テレビや新聞で映し出される戦渦の映像やアメリカトランプ大統領が、いよいよイランへの攻撃を開始したことなど、島国日本の周辺では、戦渦とも言うべき事態が起こっているにもかかわらず、対岸の火事どころか、一切わが国には関係ない絵空事のように受けとってしまっているわたしたちは、これで良いのかと自戒する。
沖縄のひとたちと平和と戦争への関心の違いが、「沖縄タイムス」の今回の企画を知ればあまりにも違いがあることに驚く。沖縄での地上戦が繰り広げられ、4人に1人が命を失うほどの大戦渦を経験した地とそうでない地との違いが、これほど鮮明に“平和”への思い入れの違いが浮き彫りになるとは恥ずかしい限りである。
「平和の礎」は、国籍問わず、軍人・民間人の区別なく、全戦没者の名を刻んでいる。「敵米兵の名前を刻銘するな」との反対の声はなかったと聞く。「戦争を憎んでも、人は憎まない」との思いからだとも説明されている。こうした平和への熱い思いを継承し続ける沖縄のひとたち。わたしたちとはそもそも平和への熱量が違い、“反戦”という言葉に対しても子どもも若いひとたちも反戦という言葉を口にするという日常がまったく違っている。大阪の子どもに反戦と問いかけても「ハンセン」「帆船」として理解されるのではないだろうか。熱量が違うだけではなく、反戦教育そのもののレベルが相当違うようである。
そもそも「反戦」への理解が、沖縄では、「反戦教育」を地上戦の経験を踏まえ、平和の尊さを学び、戦争の悲惨さを後世に伝えることを目的とし、学校教育だけでなく、家庭や地域社会全体で平和を構築できる人材育成に努めており、さらには、反戦教育は、とくに沖縄戦という悲惨な体験を背景に、その教訓を次世代に伝えるための活動として展開されている。つまりは、生涯を通じて不戦の誓いを系統立って学んでいくというシステムが構築されているという。
「戦争こそ最大の人権侵害」という同盟方針を揺るぎないものとするためには、老若男女すべてに通ずる生涯にわたる人権・部落問題を学ぶことの出来る学習プログラムの必要性が検討されて然りだろう。