Vol.310 風雲急を告げる政局 自民下野の一点に集中を

国民民主党の榛葉幹事長は、「立民とは憲法、安全保障などで決定的に考えが異なる」と指摘。「打算と数合わせで一緒に行動することは考えていない」と述べ、立民と共同歩調を取ることに慎重な姿勢を示したと報じられた。これは、立憲民主党の安住幹事長からの提案で、首班指名での野党候補の一本化が提案され、「国民民主の玉木雄一郎代表で(野党各党が)まとまるなら有力候補と考える」と述べたことに対する榛葉幹事長のコメントである。

「おいおい、参議院選挙では『手取りを増やす』『ガソリン減税』の実現を訴え、自民党政権との対決を演出しておいて、やはり連立政権入りが目的なのか」と疑いたくなるコメントだ。安住さんの野党共闘による首班指名一本化提案を拒否して自民との連立政権入りが加速されるのか注目されている。

おやおや古い話で恐縮だが、毛沢東の「矛盾論」が頭の中を交差した。ここまで立憲民主党と国民民主党の距離は「敵対矛盾」とまでいえる対立なのか。わたしにはそうは思えない。

憲法観やエネルギー政策が根本的に違うことは理解するが、ここは一旦大きな棚の上の方にしまっておいて、「企業団体献金の禁止」をはじめ景気対策や物価高への対応など、5つや6つの基本政策について両党で合意し、それを維新の会などにも訴え、野党共闘をリードすることを優先するという「内部矛盾」の範囲なのではないだろうか。大きな課題は棚に一旦上げといて、ここは、自民党というよりも旧安倍派と高市総裁実現にひとり勝ちした麻生さんの麻生派という2つの大きな潮流に一旦政権からはなれてもらうという「敵対矛盾」を優先することが民主勢力の最大の任務であることを毛沢東の「矛盾論」が説いたのではないだろうか。

すべての矛盾を和解不能な「敵対矛盾」と捉えてしまっては、連合があいだにはいって両党のつなぎ役に徹したとしても相容れない対立と矛盾は消えないまま推移してしまうという労働者にとっても悲劇の道を歩むことになると思う。

物事の内にはつねに矛盾があって、その矛盾こそが物事の発展の原動力であると矛盾論が捉えたように、この対立は、「内部矛盾」であって、両党で乗り越えられる課題であるという前向きな設定で、憲法観やエネルギー政策という内部矛盾を上手く成熟させるため、両党による勉強会や連合も含めた協議の機関をつくり、内部矛盾をマネージメント出来る仕組みをつくりあげることを優先するのが、国民に対しての政治の役割だと確信する。

いまこそ最も優先すべき課題は、自民党が村山さんという社民党党首を担ぎ、自社さ政権を誕生させたように、まずは、自民党を政権から下野させるという一点に野党は集中すべき時ではないだろうか。 

公明党さんが揺れ動いている。政治とカネというクリーンなイメージが先行する公明党にとっては、一歩も引けないことは、この間の選挙結果を見れば明らかだ。自民党だけが大敗したかのように報じられているが、公明党の低調も深刻である。とくに政治資金問題での旧安倍派問題でのダメージは、公明党にとっては自民党との連立解消にまで及ぶ深刻な問題であり、党の存続を考えても自民党との一線を画という選択もいよいよ現実のものとなってきている。

わたしが指摘する自民党とは、旧安倍派を中心とする“脱安倍”という政治の方向への舵取りを指しているつもりだ。その脱安倍のポイント第1は、「政治とカネ」問題の徹底解明と企業・団体献金の禁止を含む政治資金制度の抜本改革を成し遂げることにある。闇の部分を徹底して明らかにすることが出来る政権の誕生が必要である。

第2のポイントは、アベノミクスの総括である。長期的構造的な人口減少問題。円安と株高で景気が良くなっているかのような一種幻想をもたらしてはいるが、実体的な経済や物価高への歯止めにはいささかも役立っていない。日本経済はズルズルと衰退に向かい出している。

第3のポイントは、集団的自衛権解禁による米国の戦争への自衛隊の加担促進など、「戦争が出来る国」にする施策の数々という、危険な路線を停止させ、平和路線への転換を図れる新たな政権の誕生が急がれる。たぶん石破さんもその道を歩もうと模索したが、自民党内の軋轢もあり、頓挫してしまったのではないだろうか。政局がいよいよ「風雲急を告げている」ようだ。