自民党の総裁選挙まっただ中の渦中に“ステマ”問題が勃発した。 インター
コラム | 2025年9月30日
コラム | 2025年9月30日
自民党の総裁選挙まっただ中の渦中に“ステマ”問題が勃発した。
インターネット上の動画に候補のひとりを持ち上げるコメントや好意的コメント、さらには他候補を念頭に中傷するコメントを書き込むように応援する陣営関係者らに依頼したというのである。
そもそも“ステマ”とは、ユーザーに気づかれないように商品の宣伝や口コミを行う手法のことを言い、日本では“やらせ”や“サクラ”とも同様の意味で利用されている。
ステルスマーケティングといい、消費者に広告と明記せずに隠して、非営利の好評価の口コミを装うなどすることで、消費者を欺く行為のことを言うらしい。
まあステルス機のように相手に気づかれずに低空飛行で、宣伝する手法が語源化されたことをいうとのことである。
天下の自民党総裁、一番日本の首相に最も近いひとを選出する総裁選である。それが、こんな低調なSNS上の鳥取ループ・示現舎とレベルが同じような醜い争いに終始するとは、いささか将来の日本に不安を持つのは当然のようである。
しかし、滑稽なのは立候補した5人の候補とも党内融和を最優先し、選択的夫婦別姓の問題には口をつぐみ、外国人への規制には全員そろって必要ありと口を揃える。党内揉めることなく、全員一丸となって解党的出直しをと呼びかけているテーブルの下では、ステマを使って自陣営を盛り上げるだけならまだしも、20を超えるコメント例を示して、自ら応援する候補をヨイショし、ライバル陣営を誹謗中傷し、貶めるというのだからいただけない。
自民党総裁選において、ステマをやったという事実が社会に与える影響の深刻さを、本当に理解しているのだろうか?
「ネット上の偽情報を規制する」と豪語していた政権与党の自民党議員の顔が浮かぶ。プロバイダ責任制限法を大幅に改正し、「情報流通プラットフォーム対処法」が成立し、ようやく国内人権機関設立に向けた大きな一歩となると胸張って意見した自民党議員がいたことを忘れないでおくことにしよう。
これは単なる「印象操作」という守備範囲を超え、虚偽の情報拡散を含む、もっと俯瞰した見方をすれば、フェイク情報による世論工作であり、これを自民党総裁を決定するという権力中の権力者決定選挙で堂々とやっているのだからタチが悪いのだ。
おおよそ民主主義の先進国では絶対にあり得ないだろう。いかにこの国の政権中枢が堕落し、目先の利権とフェイクでもエセ情報でも拡散させて自分の有利になるならお構いなし、という姿勢がこの国のリーダーにふさわしいとは、返す返すも情けないばかりである。
そう言えば、被差別部落の地域をネット上に拡散させている一部の確信的な差別加害者達は、「これは部落問題の研究・調査で差別情報ではない」と嘯く主張と“ステマ”問題が同じレベルのように聞こえるし、参議院選挙で大幅議席増になった政党代表の「日本人ファーストは、外国人を排斥・排除することが目的ではない」との主張ともやっぱり同義語に聞こえてしまう。
「表現の自由」や「言論の自由」は、当然保障されなければならない。それは個人であっても、組織であっても、自分と組織の意見の表明であり、自らの考え方を内外に公表し、意見を募るための表現であり、言論である。それを自分の意見ではなく、「○○さんをおとしめよう」と作成された幾つかのフレーズに基づいて、それをあたかも自分の意見のように表明するという“ステマ”問題は、やはり国会議員という公職でありながら、そのレベルが問われるまさに幼稚なお粗末な行為といえよう。
今こそ求められているのは、自民党の歴史的・構造的危機だということを認識した上で、自民党のみならず、ひいては日本全体が衰退の淵に追い詰まれているという時代認識を共通させ、そこから救われる途はあるのかという切羽詰まった問題を、5人の候補による政策議論が最優先されなければならない課題であって、貶めるための足の引っ張り合いをネット上とはいえしてる場合ではないだろう。立憲民主党も毎日報道される自民党総裁選に埋没するのではなく、明日の日本の進路について、立憲案を提案し、こうして日本丸の舵取りをわが党が担うという大転換な構想を期待したいものだが・・・厳しいようである。