部落解放運動の総合的展開 本格的な幕開けの年に
2026年の年頭にあたって
変わる部落、減る同盟員
2026年という新たな年を迎えた。
2025年はかなり忙しかった年ではあったが、果たして成果を上げた年と言えたのであろうか。
相変わらず忙しさにかまけて日程消化型の運動から相変わらず抜け出すことはできず、肝心要の組織は同盟員が右肩下がりで減少傾向にある。大阪の各部落は混住が進み、同和対策事業で建設された隣保館や青少年会館、老人センター、浴場などが、あいついで売却され、市場原理が被差別部落に降りかかり、マンションに変貌したり、あるいは民泊に転用されたりと、みるみる部落が変わってきていることに手をこまねいているだけの解放同盟で良いはずがない。
人権の街づくりが広がる一方で
日本全国に現れている外国人の増加問題は、被差別部落も同様に転入が増え続け、かつては同和推進校と言われた小学校や中学校は、いまや多国籍のダイバーシティ型の学校に変化し、多様性を地域で否が応でも受け入れなくてはならない現状へと変貌してきている。
しかも吸い寄せられるように部落にやってくる世帯の人々は、いわば多くが貧困層であり、決して裕福な生活実態とはいえない人々が部落に集うという状態である。
なんとか地元で、こうした現象に抗うためにと社会福祉法人やNPO法人を設立し、この街に住み続けてよかったと言える街にしようとの努力や子ども食堂などの社会運動にチャレンジし、この街の子どもたちを地域全体で守っていこうという人権の街づくり運動が提唱され広がりを見てきているが、肝心の部落解放という4文字は、正直遠くに離れていっているように感じているのは、委員長のわたしだけだろうか。
地域の団体が一堂に会して
部落にこだわるのか、人権の街にこだわるのか…そもそもこれからの支部はどうあるべきなのか、政策を提案し、論議し、方向性を確認しなければならないという大作業に手をつけることなく、日程だけをこなす組織を反省したところで、2026年を迎えたいと思う。
水平社が解散し、部落委員会活動がとりくまれはじめた頃“全国部落代表者会議”が開催され、のちに部落解放同盟に名称発展していく先駆けとなったと言われている。
この考え方を各支部、地域に取り入れ、地域住民代表者会議のような仕組みを各地域で知恵を絞り、地域自慢の運動展開を呼びかけてみたい。
もちろん当該の支部代表、法人格をもった人権協会などが呼びかけ人となって、町会やPTA役員、社会福祉法人代表やNPOの代表、子ども食堂責任者、老人会や隣保館利用者代表など、地域を取り巻くすべての団体等が一堂に会して、議論を積み上げていくという“地域風土的”な価値観・行動様式を呼びかけたい。それこそが、部落解放運動の総合的展開であり、解放同盟支部の影響力を地域に発揮すべき時代なのかもしれない。
新たな同盟像を描かなければ
部落解放運動の総合的展開と提案してからでも10年以上にはなる。エコー共済や連帯分担金の導入、1支部1社会的企業の創設などの改革にとりくんできたが、未だ総合的展開にまでは至っておらず、本格的な議論も沸き起こってはいない。日常の忙しさにかまけて肝心な改革に着手できていないのが現状だ。
確かに大阪府連だけで改革できるわけではない。全国組織である以上、各都府県連との丁寧な合意形成が必要なことは言うまでもなく、綱領や規約のありようなど、基本文書そのものを根本から議論するような組織風土を創りあげなければ容易ではないことは誰の目から見ても明らかである。
しかし、つぎの世代が部落解放運動や社会運動に前のめりになり、とりくむような機運は低調であり、「部落に生まれ、部落で育つ」という若者も減少してきているのは明らかだ。被差別部落にルーツを持ちアイデンティティーを継承し、部落解放同盟に結集するという従来のパターンは崩れつつあり、新たな解放同盟像を描かなければ時代に飲み込まれてしまう。
「推進法」10年、裁判勝利の年に
被差別部落を中心に隣保館や支部、人権協会やNPO、社会福祉法人や子ども食堂、識字学級や教育支援の活動など、部落を取り巻くあらゆる団体・組織が、総合力を発揮するような横軸で貫かれた“部落解放運動の総合的展開”の本格的始動の幕開けの2026年にしたい。
そこで、府連として闘うべき当面する課題は、①「部落差別解消推進法」制定から10年を迎える本年を本格的な法律の強化・改正、さらには国内人権機関設立への足がかりの年、「情プラ法」による本格的な差別情報の削除運動の展開にとりくむことである。
②「部落探訪」をはじめとする各種裁判闘争の勝利はもとより、東京高裁判決が明らかにした「『差別されない権利』を認め、人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有する」とまで踏み込んだ画期的な判決を最大限に活かし、国会闘争などの世論形成につなげ、差別の法的禁止を求める運動の構築にとりくむことである。
③狭山再審闘争は、亡き石川一雄さんの遺志を受け継ぎ、第4次再審勝利に向けて鑑定人尋問の実現に全力を挙げる。また、国会での再審法改正を議員立法で求める案に少しでも近づけるよう全力でとりくむ。
ネットワーク型の受け皿づくり
④「部落解放全国委員会」結成から80年を迎える。被差別部落には少子高齢化の波が押し寄せ、貧困や複雑な社会的課題を抱えた人々の集住という困難に直面し、多様なニーズに応える「新たなネットワーク型の受け皿づくり」に着手する年にしなければ、未来の子どもたちに責任を果たしたとは言えない。
2026年を部落解放運動の組織のあり方を根本的に改革するためのスタートの年として、大いに議論しようではないか。各地において全力を挙げ、部落解放運動に邁進しよう。






