Vol.311 異なる意見排除する高市政権の危うさ

温厚そうに見える公明党の斉藤鉄夫代表がお怒りのようだ。
日頃穏やかそうな優しい顔の斎藤代表の顔がこわばった。高市新首相による所信表明演説のあとの記者会見での一幕である。

高市首相の所信表明演説の中での、つぎのようななくだりについて噛みついたのだ。
「政権の基本方針と矛盾しない限り、各党からの政策提案をお受けし、柔軟に真摯に議論してまいります」との内容である。一見スーと読み流してしまう発言であるが、よくよく読めば、「政権の基本方針と矛盾しない限り」においては、各党からの提案も議論の余地有りと読みとることが出来る。

つまりは、「政権の基本方針と矛盾する」意見は、受けつけませんよと言う政府の態度を表明したことを指して、公明の斎藤代表は、「これは独裁ではないか。政権の方針と矛盾すれば、はじめから議論に応じないと解釈できる」「普通はそんなことない。政権の方針とは違う角度から議論するのは当然ではないか」「ものすごく危ういものを感じた」と噛みついたのだ。

言葉とはあらためて怖いものだ。首相の所信表明演説については、一言一句衆議院においても参議院でも変えることはなく、そのままカーボンコピーのように繰り返されることが踏襲されている。国会を開くにあたってのリーダーである首相が今国会で目指すべき所信を表明することから、当然、両院において違うことを言うことは許されるわけがなく、同じ内容を繰り返すこととなる。

「政権の基本方針と矛盾しない限り、各党からの政策提案をお受けし、柔軟に真摯に議論してまいります」との首相の姿勢は、一見各党からの要望に対して耳を真摯に傾けますよと言った、低姿勢が伺えるが、実は、“わたしの政権と違う意見は断じて受けつけません”という強硬姿勢がこの言葉に隠されているとは、国会とはきわめて怖い場所であり、まさに伏魔殿ともいえる世界である。

協定書を交わした維新の会との意見調整はするが、共産党のように真っ向から自民党の方針や政権の考え方とは相容れない政党の意見は、端っから聞く耳は持ちません、という高市独裁政権を思わせる危険な兆候として、公明・斎藤代表は、これは、“独裁政権”で危険であると断罪している。いままで連立政権として四半世紀タッグを組んだ相手とは思えない発言である。

政権の基本方針とは異なる政策を各党が持っているからこそ議論が始まるのが、国会である。そもそも政治とカネ問題から端を発した公明党の連立離脱からはじまり、維新の会による電光石火の連立入りによる高市政権誕生という政治のスピード感は、“なにかが、変わりそうだ”という変化の兆しを有権者は、キャッチし、高市政権は高い支持率を得て船出することとなった。

しかし、臨時国会では、当然のように「政治のカネ問題への対応という一丁目一番地に対して、なにも手を打つことなく、議員定数の削減を最優先することはおかしいのではないか」との疑問が高市政権に寄せられるだろう。この問いに対しても「それは、政権の基本方針とは矛盾致しますので、お答えできません」と対応するのであろうか。あまりにも滑稽である。

危険な兆候が見てとれる高市政権ではあるが、船出したことは事実である。しかも維新の会は、「閣外協力」という一歩腰が引けた対応である。少数与党であり、連立する相手は、フルスペックでの協力にはほど遠い半身の姿勢を貫いている。「強い経済をつくる」「日本列島を強く豊かに」「力強い経済政策」と繰り返し、「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」などの勇ましい言葉が並ぶが、果たしてそのように展開するかは、それこそ政治の世界である。一寸先は・・・である。

アメリカトランプ大統領が日本を訪問し、日米首脳会談が開催された。
東アジアの安全保障の環境が悪化しているという現状を両国で確認した上で、さらに日米同盟を引き続き深化させる方針で一致したと報道されている。また、高市首相は「日米同盟の新たな黄金時代を共につくり上げたい」と提起し、トランプ大統領は、「日本は最も重要な同盟国だ」と応じたと報道された。「日米同盟を基軸として抑止力・対処力を高めていきます」と所信表明で述べているが、新たな黄金時代とは、「敵基地攻撃能力」を備え必要に応じては「先制攻撃」も辞さずに積極的に「対処」するという危険な意味があるのではないのかと穿った見方をしてしまう。

「憲法改正」については「私が総理として在任している間に発議を実現していただく」と表明している。やはり危うさを感じる政権である。